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パレスチナの人々を「沈黙させ、弾劾している」──芸術家らが西側の美術館を非難

11月30日、イギリスの団体「アーティスト・フォー・パレスチナ」は公開書簡を発表し、10月7日のハマスの攻撃以来、イスラエルによる空爆の結果、数千人が死亡したガザ地区での恒久的停戦を要求した。

11月26日、ガザ地区の恒久停戦を求め、オランダ・アムステルダムのダム広場に集まったデモ参加者たち。Photo: Selman Aksunger/Anadolu via Getty Images

「アーティスト・フォー・パレスチナ」によるこの公開書簡は、西側諸国の文化機関がパレスチナ人の声や視点を「沈黙させ、弾劾している」とする内容で、俳優のオリヴィア・コールマンやアーティストのモリー・クラブアップルをはじめ1,300人以上のビジュアルアーティストや作家、俳優が署名している。書簡によると、「沈黙させ、弾劾している」行為には、「パレスチナ人との連帯を表明する芸術家や芸術従事者の生活を脅かすこと、公演や映画上映、講演会、展覧会、出版の中止」などが含まれる。

書簡では、そのいくつかの具体例が挙げられている。例えば、アイ・ウェイウェイがツイッター上でアメリカのイスラエル援助を批判したことを受け、リッソン・ギャラリーがウェイウェイのロンドンでの展覧会を延期したこと、ドイツのフォルクヴァング美術館が、同館のキュレーターであるアナイス・デュプランがソーシャルメディアでの親パレスチナ・コンテンツに関与したことを理由に、グループ展の企画チームからディプランを外したこと、そしてザールランド州博物館が、ハマスを非難し、停戦を呼びかけた南アフリカのアーティスト、キャンディス・ブレイツの個展を中止したことなどだ。

書簡は「いずれの場合も、パレスチナ人の権利を支持するアーティストのコメントがキャンセルの原因となっているが、それは作品や業務内容とは無関係である」と訴え、これらの芸術団体には「憂慮すべきダブルスタンダードがある」と指摘。「残忍な抑圧に直面している他の民族に対しては容易に示される連帯の表現が、パレスチナ人には適用されていない」と疑義を呈している。 

また、ブリストルの国際現代芸術センター、アルノルフィーニがパレスチナ映画祭の一環で開催される予定だった2つのイベントを中止したこと(アルノルフィーニはこれにより激しい反発を受けた)にも言及。同団体は声明を通じて中止の理由を、芸術慈善団体として「政治活動」とみなされる可能性のあるものを宣伝することは許されないため、と述べている。

さらに、パレスチナに関する言論に関して、「表現の自由と差別撤廃を支持する多くのアーティストは、(こうした)基本的な義務を果たさない機関とは仕事しない」と警告。文学メディア、Literary Hubによると、ポエトリー財団が発行するPoetry誌が、ジョシュア・ガッターマンによるサム・サックスの作品集『PIG』の書評を掲載拒否したことを受け、ヌール・ヒンディー、サマー・ファラー、オマール・サクル、ジョージ・エイブラハムの4人の詩人が同財団の理事会とPoetry誌の編集者に対する公開書簡を発表。「彼らが人類の味方であることを証明するまで」同財団をボイコットするよう仲間たちに呼び掛け、2,000人以上の詩人たちが署名した。

ほかにも、ガザでの停戦とパレスチナ解放を求めるArt Forum誌による書簡に何千人もの著名な芸術家が署名した一方、この書簡が10月7日のハマス攻撃について言及していなかったため、一部から批判が出ていた。この書簡を受け、同誌編集長のデイビッド・ベラスコは解雇され、シニアエディター2名も辞任。同誌の寄稿者の中には、今後、同誌および同じペンスキー・メディア・コーポレーション傘下のUS版ARTnewsとArt in Americaとは仕事をしないと表明する者も出ている。

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