アイ・ウェイウェイの個展が「事実上キャンセル」。イスラエル・ハマス紛争への発言を受け
アイ・ウェイウェイがイスラエル・ハマス紛争に関してSNSに投稿した内容を受け、リッソン・ギャラリーがアイの個展開催予定を保留したと11月14日付のアートニュースペーパー紙が伝えた。
アイ・ウェイウェイの個展は、ロンドンのリッソン・ギャラリーで15日に開幕する予定だった。保留となった背景には、アイがX(旧ツイッター)で以下の発言を投稿したことがある(これは後に削除された)。
「ユダヤ人迫害をめぐる罪の意識は、時にアラブ世界への対応で埋め合わされてきた。ユダヤ人コミュニティは、金融面でも、文化面でも、メディアへの影響力という点でも、アメリカで大きな存在感を示し続けており、イスラエルへの年間30億ドル(約4500億円)の援助パッケージは、アメリカがこれまでに行った投資の中で最も価値のあるものの1つだと何十年も喧伝されている」
リッソンの担当者は予定が変更になった理由を、声明でこう述べている。
「アイ・ウェイウェイがSNSに投稿したコメントについて多面的な話し合いを持った結果、彼の新作を発表するのに適切な時期ではないとの結論に至りました。イスラエルおよびパレスチナの領土や、国際社会における悲劇的な苦難を終わらせることに全力を注ぐべきときに、反ユダヤ主義あるいはイスラム嫌悪とみなされるような議論をする余地はありません。アイ・ウェイウェイは表現の自由を支持し、抑圧された人々を擁護する活動に力を注いでいることで知られています。私たちは、そんな彼との長年の関係を尊重し、大切にしています」
一方、アイは自身の声明で、展覧会はギャラリー側から「事実上キャンセルされた」とし、次のように述べている。
「私の考えでは、たとえ正しくないものであっても、あらゆる種類の意見が表明されるべきで、むしろ間違った意見は大事だ。もし、表現の自由が同じような意見に限定されるなら、それは表現を牢に閉じ込めるようなものだ。言論の自由とは、異なる声、我われとは異なる声を包摂することだが、端的に言えば、我われはこれまで表現の自由がある社会ではなく、言論が尊重されない社会で生きてきた。言論を統制する者にとって、個人の言論は重要ではなく、受け入れられるものでもない」
アイはさらにこう続ける。
「何千、何万という展示会がまだ行われているのだから、展示会が1つ中止になったことはまったく重要ではないし、私が存在するかどうかも重要なことではない。なぜなら、人は暗闇を好まず、必ず誰かが光を求め、光が人生にもたらす喜びを求めるからだ」
アイは、難民問題を扱った『ヒューマン・フロー 大地漂流』(2017)でガザで撮影された映像を用いるなど、これまでにも作品中でパレスチナの紛争を取り上げてきた。
なお、現在ベルリンのギャラリー、ノイゲリームシュナイダーと、オランダ・ロッテルダムのクンストハル美術館では、アイの個展が引き続き開催されている。(翻訳:石井佳子)
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