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日系人の女性画家、日比久子の作品も! ブルックリン美術館の2023年の収蔵作品から必見の7作品を紹介

メトロポリタン美術館に次いで、ニューヨークで2番目の規模を誇るブルックリン美術館。同館は2023年、300点以上の作品を新たに収蔵した。特に黒人とアジア系アメリカ人アーティストの作品に注力しており、同館コレクションの多様性はさらに豊かなものとなった。

2023年に300点以上を収蔵した、ブルックリン美術館。Photo: Ramin Talaie/Corbis Via Getty Images

ブルックリン美術館は今年、現代アートを中心に、さまざまなジャンルや時代の作品を新たに収蔵した。代表的な作家は、KAWSラシッド・ジョンソン、Liza Lou、Whitfield Lovell、 Ebony G. Patterson、 Tyler Mitchell、Yto Barrada、日比久子、Jenna Gribbon、 Valie Exportら。これらの新収蔵品のいくつかは、来年オープン予定のアメリカン・アート・ギャラリーで展示される。そのほか、南アフリカを代表する現代アーティスト、エスター・マフラングの絵画や、李氏朝鮮時代の能書家、金正喜の書簡なども収蔵している。

2023年のコレクションについて、ブルックリン美術館のアン・パスターナク館長は声明の中でこう述べている。

「重要なのは、アジア系アメリカ人女性の日比久子が制作した最初の作品が(アメリカン・アート・コレクションに)収蔵されたことです。我々が、畏敬と驚きを喚起し、人間性の架け橋となるような意義深いコレクション構築にあたり、ご寄贈いただいた方々をはじめ、惜しみない支援を提供してくださった皆様に感謝します。このような素晴らしい作品を来館者の皆様と分かち合えることを誇りに思います」

以下、同館の新収蔵品からUS版ARTnewsが選んだ7作品を紹介する。

1. マリア・マグダレーナ・カンポス=ポンス《Voyeurs and Beholders of...》(2008年)

Photo : Courtesy Brooklyn Museum

イラク戦争(2003-11)をテーマに制作された。同館で現在開催されている展覧会「María Magdalena Campos-Pons: Behold」(2024年1月14日まで)で展示されているこの作品は、背後の「覗き見する者」たちと、手前で涙を流す「見つめる者」たちの視線の比較を描いている。

2. ディアニ・ホワイト・ホーク《Untitled (Pink and Blue)》(2022年)

Photo : Courtesy Brooklyn Museum

ディアニ・ホワイト・ホークは、自身のルーツであるアメリカインディアンの部族、ラコタの工芸品と西洋の絵画技法を融合させたビーズ画で知られる。彼女は2023年マッカーサー財団「天才賞(Genius Grant)」フェローシップに選ばれており、この作品についてブルックリン美術館は、同フェローで評価された抽象化へのアプローチと、先祖伝来の芸術形態の研究の「象徴的な例」と説明している。

3. グラフトン・タイラー・ブラウン《Golden Gate, Yellowstone》(1889年)

Photo : Courtesy Brooklyn Museum

黒人画家が、太平洋岸北西部とカリフォルニアの風景を描いた最初の作品として知られている。美術館の大口寄付者であるシャーリン・ゴインズ夫妻から寄贈された。

4. エスター・マフラング《Untitled》(2017年)

Photo : Courtesy Brooklyn Museum

南アフリカの現代アーティスト、エスター・マフラングは独学アートを学んだ。この作品は南アフリカのアマーンデベレ族に伝わる、家屋の塀などに描かれる幾何学的なデザインをモチーフにしている。

5. ツインズ・セブン・セブンの《Laro city(村の風景)》(1968年)

Photo : Courtesy Brooklyn Museum

ツインズ・セブン・セブン(1944-2011)は芸術家、音楽家として活躍し、1960年代初頭には独立したばかりのナイジェリアのオショグボ芸術運動の主要メンバーだった。植民地主義の束縛のないナイジェリアの村の風景を想像させる作品だ。

6. 日比久子《Satoshi Studying》 (1945-54年) 

Photo : Courtesy Brooklyn Museum

カリフォルニア州で活動した日系人画家、日比久子(1907-1991)の作品が、アジア系アメリカ人女性作家としては初めて同館に収蔵された。ニューヨークの賑やかな街並みを見下ろす部屋で、机に向かって読書する息子の様子が描かれている。画家の娘であるイブキ・ヒビ・リーから寄贈された。

7. 金正喜(キム・ジョンヒ)の書簡(1830年)

Photo : Courtesy Brooklyn Museum

李氏朝鮮時代の実学者、能書家、金正喜(1786-1856)による書簡。政府の公務で平壌(現在の北朝鮮の首都)に行くことについて漢字で記されている。当時の朝鮮ではハングルが中心だったが、一部では漢字も使われていた。(翻訳:編集部)

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