授業でヌード画を見せた教師を生徒が非難。揺れるフランスの教育現場
フランスの学校で、ルネサンス期イタリアの画家、ジュゼッペ・チェザーリ(1568-1640)による裸体が描かれた絵画をめぐり、教師らのストライキにまで発展する騒動が起こった。
地元紙のル・モンドによれば、問題が起こったのは、パリの西に位置するイヴリーヌ県イズーにあるコレージュ(4年制の中等教育機関。日本の小学6年から中学3年にあたる)、ジャック=カルティエで12月7日に行われた、11歳と12歳クラスのフランス語の授業だ。
そこで教師は、猟師のアクタイオンが女神ディアナとニンフたちが水浴びする場面を目撃する様子を描いた、ルーヴル美術館所蔵のジュゼッペ・チェザーリの油彩《ディアナとアクタイオン》(1603)を生徒たちに見せた。すると、生徒たちの何人かは、画中の5人の裸の女性にショックを受け、目をそらしたという。
アートニュースペーパーによると、その後、様々な社会的な事柄を学ぶ授業プログラム「vie de classe」でのディスカッション中に「教師がイスラム嫌悪的な発言をした」と主張する生徒も現れたが、学校側は否定している。タイムズ紙によれば、一部の保護者は学校に苦情を申し立てたという。
事態が紛糾する中で、同校の教師たちはチェザーリの絵を見せた教師に連帯して、今週初めに授業をボイコットした。教師たちは以前より、「校内の雰囲気が非常に悪い」と管理職に訴えていたがサポートは得られず、12月8日、フランス国家教育サービス局長宛てに、学校に蔓延する「誹謗中傷行為、職員に対する事件の多発と悪化、世俗主義への攻撃」を指摘する書簡を出していた。
12月11日、フランスのガブリエル・アタル教育相がジャック=カルティエを訪れ、事実無根の情報を流した生徒を処分すると述べた。その後、学校は再開されたという。
2023年10月13日、フランス北部の高校で教師が卒業生に刺殺されるなど、近年フランスでは教師に対する襲撃事件が相次いでおり、緊張状態が続いている。
12月8日には、2020年にイスラム教の預言者ムハンマドの風刺画を教材に授業を行った教師のサミュエル・パティが過激派に斬首された事件の裁判で、10代の若者6人に有罪判決が下されている。(翻訳:編集部)
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