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カニエ・ウェストが安藤忠雄建築をわずか2年で売却。購入時から5億円超の下落

ラッパーでデザイナーのYe(イェ)こと カニエ・ウェストが、カリフォルニア州マリブにある安藤忠雄設計の邸宅を5300万ドル(約75億5000万円)で売りに出している。12月19日、ウォールストリート・ジャーナルが報じた。

2023年5月13日、ロサンゼルスの街中をパートナーのビアンカ・センソリと歩くカニエ・ウェスト。Photo: Rachpoot/Bauer-Griffin/GC Images

それまでも度々その奇妙な言動が取り沙汰されてきたが、2022年にSNSでの反ユダヤ主義的な発言をきっかけに、音楽やファッション業界からキャンセルされたカニエ・ウェスト。それまで、カルチャーシーンで絶大な存在感を見せてきた彼が今、マリブにある安藤忠雄設計の邸宅を5300万ドル(約75億5000万円)で売りに出しているという。

ファッションやアートへの造詣の深さで知られるカニエだが、とくに建築に関しては、学生の頃から建築誌『Architectural Digest』を愛読してきたといい、中でも安藤忠雄の作品には多大なるリスペクトを表明してきた。2018年に日本の直島にある安藤忠雄設計の地中美術館を訪れ、2021年にベルリンを訪れた際には、地元メディアに「俺は音楽を作るために、安藤忠雄は建築するために地球に存在する」と語っている。そんなウェストが念願かなってアメリカ・カリフォルニア州マリブビーチに立つ安藤建築を手に入れたのは2021年9月のこと。5725万ドル(現在の為替で約81億6000万円)だった。

この不動産を扱うオッペンハイム・グループのエージェント、ジェイソン・オッペンハイムによると、この邸宅は、ウォール街の重鎮、リチャード・サックスが2013年から7年の歳月を費やして完成させたもの。安藤のトレードマークである滑らかなコンクリートで造られた建物には、約1200トンのコンクリートと200トンの鉄骨が使われ、砂浜に安定させるため18メートルもの長さの鉄柱が12本打ち込まれている。3階建ての家には4つの寝室があり、海に面した巨大な窓、約139平方メートルのデッキスペースがある。

カニエ・ウェストがリノベーションする前の邸宅。Photo: Roger Davies/The Oppenheim Group

ウェストは購入後、全面的な改修工事に着手したが、現在は窓や配線、ドアなど内装が全て取り外された状態で止まっている。というのも、改修を巡って業者とトラブルになり、2023年9月に訴えを起こされているのだ。法廷文書によると、工事を請け負い、住み込みの管理人でもあったこの業者は、ウェストによって1日16時間働かされ、断熱材が露出した部屋で床に寝ることを強要されたと主張。また、家の電気系統を取り壊して配線を大型発電機に取り替えるという指示に対して火災の危険があると拒否したところ、解雇されたという。ウェストはこれらの主張を否定した。

オッペンハイムは、「現在の状態では、この家は白紙のキャンバスです。完成させるには、数百万ドルかかるでしょう」と明かしつつも、「この家の建築的な完全性と建築的価値は残っています」と付け加えた。ウエストが売却を考えている理由については明言を避けた。

アメリカの不動産業者、Redfinによると、2023年11月のマリブの住宅販売価格の中央値は350万ドル(約5億円)で、2022年11月と比較すると21.3%下落しているが、オッペンハイムは、市場はまだ比較的堅調であるという。さらに近年、アメリカのセレブリティの間で安藤建築の人気は上昇している。2023年初め、ビヨンセジェイ・Zはマリブにあるオーシャンフロントの安藤が手掛けた豪邸を約2億ドル(約285億)で購入し、2023年4月、ウェストの元妻でモデル、実業家のキム・カーダシアンは安藤と2年に渡ってあるプロジェクトを進めていると明かしている。ウェストが売却を試みるこの邸宅は、果たして誰の手に渡るのか。

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