6歳児を含む1万6000人の作家リストが流出。AIの訓練に使用したとしてMidjourneyに非難が殺到
生成AIを開発するMidjourneyがAIの訓練に使用したと思われる1万6000人のアーティストのデータベースがSNS上で拡散され、同社を糾弾する動きが激化している。
新しい年のはじまりとともに、今年こそは健康のためワークアウトを頑張る! とか、語学を習得する!といった抱負を掲げた人も多いのではないだろうか。しかし、生成AIプログラムを開発するMidjourneyは新年早々、同社がAIの訓練に使用したアーティストのリストが外部流出したことにより、その対応に追われることとなった。
というのも、アーティストたちがX(旧ツイッター)と分散型SNSのBluesky上に、MidjourneyがAIの訓練用に作成したと思われるGoogleシートへのリンクを貼り付けたのだ。全25ページからなるこのデータベースの24ページにわたり、時代、スタイル、ジャンル、ムーブメント、メディウム、テクニックが記された約1万6000人のアーティストの名前が掲載されていた。コンピュータゲームの開発・販売企業、Riot Gamesのシニア・ストーリーボード・アーティストであるジョン・ラムは、Midjourneyのソフトウェア開発者たちがこのデータベースを画像生成AIの訓練用に作成したことを裏付けるやりとりのスクリーンショットも数枚掲載している。
データベースに含まれるアーティストの中には、近現代の著名なアーティストもいる。ほんの一例に過ぎないが、サイ・トゥオンブリー、アンディ・ウォーホル、アニッシュ・カプーア、草間彌生、ゲルハルト・リヒター、フリーダ・カーロ、アンディ・ウォーホル、エルズワース・ケリー、ダミアン・ハースト、アメデオ・モディリアーニ、パブロ・ピカソ、ポール・シニャック、ノーマン・ロックウェル、ポール・セザンヌ、バンクシー、ウォルト・ディズニー、フィンセント・ファン・ゴッホらの名前が確認できる。
また、リストにはハズブロや任天堂のような企業で商業的に成功を収めたイラストレーターもいる。例えば、大人気戦略トレーディングカードゲーム「マジック・ザ・ギャザリング」にアートを提供したコミックアーティストのフィル・フォグリオもその一人だ。また、2021年にシアトル小児病院の募金活動の一環で絵を描いたHyan Tranくん(6歳)の名前もある。フォグリオは他のアーティストたちにも、自分の名前がリストに含まれているかどうか検索し、まだ弁護士を雇っていない場合は法的代理人を探すよう勧めている(現在、このGoogleシートへのアクセスは制限されている)。
そもそもこのリストは、約1年前にカリフォルニア州北部地区連邦地方裁判所に提出された、Stability AI、Midjourney、DeviantArtを相手取った集団訴訟の訴状の修正案に含まれていたものだ。カリフォルニア連邦裁判所の判事が昨年10月30日、アーティスト集団がMidjourneyとDeviantArtに対して起こした複数の訴えを棄却したことを受け、この修正案は昨年11月29日に提出されていた。
アメリカでは生成AIの著作権をめぐり、様々な動きが起きている。昨年8月、ワシントンD.C.の連邦判事は、AIによって生成されたアート作品は「人間の関与」を欠くことから、著作権保護の対象にはならないとする判決を下した。また2022年9月には、Midjourneyを使って生成されたジェイソン・M・アレンの作品がある公募展のデジタルアート部門で1位を獲得したことから、ネット上で論争が起きた。
生成AIの著作権問題への対応として、新しいツールも生まれている。シカゴ大学の研究者たちは昨年10月、画像生成AIの学習に「毒」を与え、画像を生成する能力を無効にすることができるツール「Nightshade」を発表し、話題となった。
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