球場にファンを呼び戻せ!NYメッツがラシッド・ジョンソンらとのコラボグッズを発表
MLBニューヨーク・メッツが現代アーティストのラシッド・ジョンソンとジョエル・メスラーのコラボグッズを発表した。精力的なアートコレクターとしても知られるオーナーのスティーブ・コーエンが発案したコラボによって球団は、不調に終わってしまったチームにファンを呼び戻そうとしている。
ヘッジファンド運営会社Point72のCEOを勤める億万長者のスティーブ・コーエンが2020年に24億ドル(現在の為替で約3514億円)で買収した球団、ニューヨーク・メッツにとって昨シーズンは望ましくない成績に終わってしまった(率直に言ってしまえば好調なスタートすら切れなかった)。しかし、メッツの本拠地であるクイーンズではスプリングトレーニングが今年も始まろうとしており、コーエンは、2024年シーズンに計19の豪華プレゼントを用意し、球場にファンを呼び戻そうとしている。
その中で最も注目すべきギフトは、5月25日と7月13日に入手できる「Artist Series」だ。5月には、元アートディーラーで画家のジョエル・メスラーが手がけたビーチバッグ、そして7月にはコンセプチュアル・アーティストのラシッド・ジョンソンがデザインしたバケットハットがそれぞれ用意されている。
このプレゼントキャンペーンにメスラーが起用されたのは、自然な流れと言えるだろう。
「野球ファンの多くはすでに熱狂的な収集癖をもっています」と、彼は語る。「私は野球カードを通して、コレクションする楽しみを6歳の頃から心得ています。アーティストとメッツを何らかのかたちでつなげることは、当然のことのように思えました」
メスラーがそう語るように、このプロジェクトは野球観戦から誕生した。昨シーズンにコーエンは、ジョンソンやメスラー、ジェフ・クーンズといったアーティストをスイート席に招待している。そこでは、コーエンと妻のアレクサンドラのアートコレクションにまつわる話や、ニューヨークは事実上アート界の首都であるという話が繰り広げられた。そこでコーエンは「Artist Series」を思いつき、彼の娘でありガゴシアンのアソシエイト・ディレクターを務めるソフィー・コーエンが即席のキュレーターとなった。
コーエン夫婦は、ARTNews Top 200 Collectorsに毎年名を連ねるほどの熱心なアートコレクターとしても知られている。これまでウィレム・デ・クーニングやアンディ・ウォーホル、パブロ・ピカソ、ジャスパー・ジョーンズ、ジェフ・クーンズ、ジャクソン・ポロックといった世界トップクラスのアーティストの作品をコレクションしてきたが、その中に、ジョンソンやメスラーの作品も間違いなく入っているだろう。
メスラーが手掛けるビーチバッグには、ブルーとオレンジの伝統的なメッツカラーの風船に野球ボールが描かれた近年の作品が用いられる見通しだ。「この作品は、メッツのイメージと合いますよね」と、彼は言う。「1万5000人がボールの形をした風船を身につけながら歩いていると考えると、素敵だと思いました」
過去にもメスラーはこうしたコラボアイテムを手がけている。彼は香港に拠点を置くブランドIzzueと手を組み、色鮮やかなイメージが印刷された4種類のTシャツとバケットハットを2点、そしてトートバッグのカプセルコレクションを2021年に発表した。また、2023年にはアーティストでありデザイナーのカールトン・デウッディとともに、カルチャー誌Culturedのハンプトンズ特集号の発売を記念した限定Tシャツを制作している。
ほかにもメスラーは、「ホームレスや住宅補助の変化による住居の不安定性に直面している大勢の人々に、食料、危機管理サービス、住居、その他の重要な支援を提供する」ために、アーティストが250ドル(約3万7000円)で販売される限定プレートをデザインする取り組み、「Artist Plate Project」にも参加した。
ジョンソンも多くのコラボ商品を手掛けてきた。メスラーと同じくArtist Plate Projectに参加した以外にも、2021年初頭にステラ・マッカートニーと手を組み、彼が開発した「Anxious Red」と呼ばれる色を用いた絵画作品を基に限定Tシャツを制作した。ジョンソンは、代表作《Anxious Men》があしらわれたTシャツとロングスリーブシャツ、そして帽子も手がけており、これらは彼が所属するギャラリー、ハウザー&ワースから購入可能だ。
アパレルラインナップを手がける前にもジョンソンは、装飾品ブランドLizWorksの創業者リズ・スウィグとともに限定ジュエリーを制作している。このラインナップには、同じく《Anxious Men》があしらわれたブレスレットやシグネットリング、ワイドリング、そしてネックレスが含まれている。金とチタンのモデルがそれぞれ用意されたこれらのアクセサリーは、8500〜30万ドル(約124万〜4400万円)で販売された。
メスラーは、自分がデザインしたビーチバッグがコレクターから注目される可能性は低いと語っているが、ジョンソンが作ったバケットハットには高い関心が寄せられると推測している。
「実際に配られてみないとわかりませんが、ラシッド・ジョンソンのバケットハットの方が価値が高いことに人々は気づくでしょうね。転売価格がいくらになるのか気になります」と、メスラーは思いをはせる。「ついついディーラー目線で考えてしまいます」
このようなプレゼントキャンペーンは、先着1万5000人の来場者に渡されることが多いので、もし入手したければ早めに球場に訪れるようにしよう。(翻訳:編集部)
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