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アイ・ウェイウェイの“中指”の彫刻、白昼堂々盗まれる。ハンブルクの高級商業地区で

艾未未(アイ・ウェイウェイ)のガラス彫刻3点が、ドイツのハンブルクで開催中の展覧会から盗まれた。市内の高級ショッピング街、ノイアー・ヴァルにあるルマス・ギャラリーで事件が発生したのは昼間のことだった。

ハンブルクのギャラリーから盗まれたアイ・ウェイウェイの彫刻作品の1つ Courtesy Hamburg Police

地元当局は、盗難事件の犯人に関係しそうな情報の提供を呼びかけている(4月29日時点)。同ギャラリーの警報装置は、開廊時間中に作品が動かされた際のアラートを出していなかったと報じられている。

ハンブルク警察のウェブサイトによると、「事件につながりそうなことを目撃した、あるいは犯人や彫刻の所在に心当たりがある」などの情報提供者のためにホットラインが設置されたという。

アイ・ウェイウェイの手をかたどった赤、黄、オレンジ色の作品は、ルマス・ギャラリーのウェブサイトでそれぞれ9500ユーロ(約1万ドル)の値が付けられていた。この3作品は、中国の反体制アーティストとして知られるアイの代表的な写真シリーズ「Study of Perspective(遠近法の研究)」(1995-2017)を引用したものだ。同シリーズの作品でアイは、世界中の記念碑的建造物の前や政治色が濃い場所で中指を立てている。

シリーズの中で最も有名なのは、《Study of Perspective: Tian’anmen(遠近法の研究:天安門)》(1997)だ。この作品は北京の天安門広場で撮影されたものだが、そこでは1989年に何百人もの民主化運動デモ参加者が軍隊の弾圧で犠牲になった。

最近では、この写真は国家安全維持法に違反するとして、中国政府寄りの政治家たちの批判の的となっている。昨年、香港で新設された現代美術館「M+」は、オープン時に予定されていた同作品の展示を取りやめた。

中国政府から長年の反政府的活動に対する報復を受けたアイは、2015年に家族とともにベルリンに移住した。しかし19年、第二の故郷であるドイツが難民に対して不寛容になったと感じると公言し、ドイツを去ることを決意。英国に移ったが、ベルリンのスタジオは維持している。(翻訳:岩本恵美)

※本記事は、米国版ARTnewsに2022年4月29日に掲載されました。元記事はこちら

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