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「パレスチナの人々との連帯」に合意できず。アメリカの著名ライターが美術館でのイベントを中止

アメリカの著名ライター2名は3月1日、イスラエル・ハマス紛争に対する立場の違いを理由に、ブルックリン美術館で予定されていたイベントへの登壇を辞退すると発表した。

ブルックリン美術館の外観。Photo:Cindy Ord/ Getty Images

アメリカの著名なカルチャーライターのドリーン・セント・フェリックス(Doreen St. Félix)と詩人で作家、大学教授で活動家もあるニッキー・ジョバンニ(Nikki Giovanni)の2人は3月1日、インスタグラム上で、翌日に予定されていたブルックリン美術館でのイベントへの出演を辞退すると発表した。

『ニューヨーカー』誌での仕事で知られるセント・フェリックスと、詩人として高く評価されているジョバンニは、昨年のサンダンス国際映画祭でお披露目されたジョバンニのキャリアと半生を追ったドキュメンタリー映画『Going to Mars: The Nikki Giovanni Project(火星へ行く:ニッキ・ジョバンニ・プロジェクト)』のブルックリン美術館での上映会後に予定されていたトークショーに登壇する予定だった。このイベントは、アメリカ国内外の「表現の自由」を支援することを目的としたアドボカシー団体、PENアメリカが共催していた。

2人はインスタグラムに投稿した声明の中で、「PENアメリカとブルックリン美術館が、パレスチナの人々との連帯、および、ジェノサイド阻止に賛同しなかったためイベントへの参加を取りやめた」と理由を述べている。

ガザ保健省によれば、10月7日のハマスの攻撃以来、イスラエルの空爆による死者数は3万人を超えている。

US版ARTnewsはブルックリン美術館の広報担当者にコメントを求めたが回答はなかった。同館は昨年12月、親パレスチナの活動家らから抗議を受けた際、広報担当者を通じて「平和的に集会するいかなる団体の権利も支持する」という立場を表明している。一方のPENアメリカは、「ブルックリン美術館でのイベントがキャンセルされたことを残念に思う」と述べた上で、こうコメントした。

「われわれは表現の自由を守る団体として、当然のことながら、この紛争に対して自らの見解を表明し、良心の命じるままに行動する各個人の権利を尊重します。そして私たちは、パレスチナの人々の命が奪われ、活気ある文化的コミュニティを支える美術館や図書館、モスクが破壊されたことに遺憾の意を表します。また私たちは、家族を殺されたり人質に取られたりしたイスラエル人に対しても、同じように胸を痛めています」

PENアメリカを同じ理由で非難した作家はセント・フェリックスとジョバンニだけではない。2月3日には500人以上のライターが公開書簡に署名し、同団体がこの問題に対して「沈黙」していることを糾弾し、「生ぬるくどっちつかずで自己満足的な中道から目を覚ませ。今まさに起きている大虐殺に立ち向かうべきだ」と求めている。

これに対応するかたちでPENアメリカは2月7日に声明を発表し、ガザでの「相互に合意した停戦」を求めると同時に、200人以上のイスラエル人を殺害し、1200人以上の人質をとった10月7日のハマスの攻撃についても言及した。同団体はこの紛争について、「継続するこれらの重大な損失に打ちのめされ、悲嘆している」と記している。

アメリカ国内では、イスラエル・ハマス紛争の影響で様々なアートイベントがキャンセルされている。例えば今年初めには、インディアナ大学でのパレスチナ人アーティスト、サミア・ハラビーの展覧会が中止されたほか、サンフランシスコのイエルバ・ブエナ・センター・フォー・ジ・アーツで開催された展覧会では、数名のアーティストがパレスチナを支援するべく出展作品を変更したことから、展示の一部が閉鎖された。(翻訳:編集部)

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