スティーブ・ジョブズの妻が率いるNPOが名門美大のキャンパスを買収。ディエゴ・リベラの壁画を救う
2022年に閉校し、キャンパスが売りに出されていたカリフォルニア州の名門美術大学、サンフランシスコ・アート・インスティテュート(SFAI)。同校に残された5000万ドル(約72億円)の価値があるとされるディエゴ・リベラの壁画の去就も含めて今後の動きが注目されていたが、今週、故スティーブ・ジョブズの妻、ローレン・パウエル・ジョブズが共同代表を務める非営利団体がキャンパスを買収したと発表された。
1926年に開校したサンフランシスコ・アート・インスティテュート(SFAI)は、象徴的な2つの校舎のほか、鐘楼、中庭、図書館、ギャラリーで構成される。著名な卒業生には、写真家のアニー・リーボヴィッツや画家のケヒンデ・ワイリーがいる。そんな歴史ある名門校が2022年に約2000万ドル(現在の為替で約30億)の負債を抱えて閉校し、キャンパスを売却すると発表した。
その中には、1931年にSFAIが依頼して制作されたディエゴ・リベラの壁画《The Making of a Fresco Showing the Building of a City》も含まれていた。壁画は幅約23メートルで、人々がフレスコ画を描く様子がダイナミックに展開されている。多くの壁画を手掛けた彼の作品の中でも重要なもので、5000万ドル(約72億円)の価値があるという。
多くのアーティストや市の指導者たちは、売却にあたり、壁画がこの場所に留まるべきと主張。サンフランシスコ監督委員会は、撤去されるのを防ぐために壁画をランドマークに認定した。
今週、故スティーブ・ジョブズの妻ローレン・パウエル・ジョブズを含む、地元の芸術指導者や慈善家からなる非営利団体が、SFAIのキャンパスを約3000万ドル(約45億円)で購入したとサンフランシスコ・クロニクル紙が報じた。売却には壁画も含まれており、閲覧室に残すことが決まっている。
同団体は約8639平方メートルのキャンパスを芸術研究所として存続させる意向で、最長4年かかるとされるメンテナンス問題の解決に乗り出す。
サンフランシスコ監督委員会のアーロン・ペスキン会長は、今回の買収について、「サンフランシスコは、百貨店メイシーズの地元店舗の閉店が決定し、公的組織への襲撃事件が相次ぐ中で、良いニュースを必要としていました。これは、芸術と文化がサンフランシスコの復興の一部となりうることを示すものです」と語った。