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バンクシーの偽物がグラスゴーの街に現る! お馴染みのネズミモチーフに街の人は大騒ぎ

現在、スコットランド・グラスゴーの現代美術館(GoMA)でバンクシーの公式展が開催中だ。これに伴い、街中の主要な壁がフェイク作品で彩られるという現象が起きている。しかし中には「本物?」と見紛う作品も。

ネズミがモチーフの「本物の」バンクシー作品。Photo: Getty Images

バンクシーの14年ぶりとなる公式展「Cut & Run」がグラスゴーの現代美術館(Gallery of Modern Art=GoMA)でスタートするや否や、スコットランド最大の都市の壁は、さまざまなストリートアートで埋め尽くされることとなった。そのうちの1点は、14年ぶりとなる個展を都市の中で完結させるためにバンクシー自身が描いたのではないか、という憶測が飛び交うほど作風が酷似していた。しかし、この噂を打ち消す証言がグラスゴーのアーティスト2人組から寄せられた。曰く、このフェイク作品はある実験のために彼らが制作したものだという。

「Cut & Run」のオープンから数日後、シアラン・グローベルとコンゾ・スロブは、グラスゴーの大通りであるブキャナンストリートの建物の壁に、バンクシーの定番のモチーフであるネズミを描いた。手にマレットを握り、マーチングバンドのようなスタイルで行進しているネズミの姿だ。ドラムヘッドの中央には穴が開いていて、その周りには「God Save The King」の文字。ネズミの尾はネズミ捕りに引っかかっていて、エサにはイギリスのタブロイド紙、ザ・サン(メディア界の重鎮でアートコレクターとしても知られるルパート・マードックがオーナー)が使用されている。

BBCによると、多くの人々がこれを本物のバンクシー作品だと信じており、2人のアーティストは、彼らのオマージュが合法的に思われるようにするために、バンクシーの過去と現在の作品を綿密に研究したという。スロブはBBCスコットランドの番組「ランチタイムライブ」の取材に次のように答えている(2人はまた、インスタグラムで自分たちのプロセスを示した「ハウツー」も投稿した)。

「ぼくらはバンクシー作品を徹底的に調査し、研究しました。そして、まるでバンクシーが描いた本物であるかのように見せかけながら、そこに自分たちのアイデアも加えたんです。バンクシーの心の中に入るだけでなく、バンクシーの手にもなりきったわけです。とても楽しい実験でしたが、バンクシーのように、いともたやすく描いたように見せるのはかなり挑戦的でもありました」

二人はまた、この実験は、バンクシーという著名アーティストの作品に対する人々の反応を検証するためのものだったと話す。確かに二人が描いたネズミはヴァイラルになったが、彼らの予想通り、バンクシーのものではないことが明らかになると、人々の意見はコロリと変わった。

「面白いのは、バンクシー作品ではないと確定した途端、同じ作品なのにすべての価値を──経済的な価値も芸術的な価値も──失ったことです。その時点で、もはや市議会にとってはただの目障りな落書きに成り下がりました」とスロブは話す。

この作品はその後、何者かによって一部が塗りつぶされ、グラスゴー市議会は作品を撤去すべきだと主張。市議会の広報担当者は、「真のバンクシーを確認したいなら、GoMAの公式展を見にくればいい」と述べている。

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