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ヤン・ファーブル、セクハラ裁判で執行猶予付き懲役18カ月の判決

ベルギーの有名なアーティスト・振付家のヤン・ファーブル(『ファーブル昆虫記』で有名なジャン・アンリ・ファーブルのひ孫)が、セクハラと強制わいせつ行為で、4月29日にアントワープの裁判所から懲役18カ月の執行猶予付き判決を受けた。

ヤン・ファーブル Photo Alexei Danchev/Sputnik via AP

ヤン・ファーブルは6件の訴えについて有罪とされており、その中にはフレンチキスをしたとされる事件も含まれる。ファーブル側はこの行為についてはもちろん、他の件についてもハラスメントの事実はないと否定している。

ブリュッセル・タイムズの報道によると、執行猶予付き判決(一定の条件を満たせば服役の必要はない)により、今後5年間にわたり投票権などの公民権が制限されるという。

ファーブルのダンス・カンパニー、トルブレインにかつて在籍していた20人から、ファーブルが従業員にセクハラを行っているという申し立てがあったのは2018年のこと。この告発は、カルチャーマガジン、レクト・ヴェルソ(Rekto Verso)への手紙で公にされている。この手紙に実名で署名したのは8人、残りの12人は匿名だった。

その手紙によれば、ファーブルは出演を依頼する形で女性にコンタクトし、その後「性的なアプローチをした」という。また、騙されてエロティックな写真を撮られたとする告発もあった。トルブレインは一時期、フランデレン地域政府から年間100万ドルを助成されていたが、その内部ではこうした行為が「隠れた慣行」になっていたという。

ファーブルはこれらの申し立てを繰り返し否定しているが、今回、法廷には姿を見せなかった。

弁護士に宛てた書状でファーブルは、「私のせいで傷ついた人たち、嫌な思いをした人たちに心から謝罪する」と述べる一方、「アナーキーな愛と美を願う」と記したという。

振付家として有名なファーブルだが、アート作品も広く知られている。パリのルーブル美術館やサンクトペテルブルクのエルミタージュ美術館、日本の金沢21世紀美術館などに展示・所蔵されているほか、ベルギー代表として参加した1985年のヴェネチア・ビエンナーレや2017年のドクメンタ14といった世界的な美術展にも作品が出展されている。

アントワープ裁判所は、ファーブルが「ダンサーたちが彼の思い通りにならざるを得ない、敵意と屈辱に満ちた労働環境を生み出した」としている。

執行猶予付きの判決に加え、ファーブルはハラスメントを訴えた5人の女性に対し、それぞれ1ユーロという象徴的な支払いを命じられた。(翻訳:岩本恵美)

※本記事は、米国版ARTnewsに2022年4月29日に掲載されました。元記事はこちら

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