石内都がケリングとアルル国際写真フェスティバルの「ウーマン・イン・モーション」フォトグラフィー・アワードを受賞
写真家の石内都が、ケリングと写真の世界的芸術祭、アルル国際写真フェスティバルが主催する2024年「ウーマン・イン・モーション」フォトグラフィー・アワードを受賞した。2019年の設立以来、日本人の受賞は初めて。
グッチ、サンローランなどのブランドを擁するフランス・パリのファッションコングロマリット、ケリングは、文化・芸術分野における女性の地位と評価について考察するためのプラットフォームを提供すると共に、多くの人々にインスピレーションを与えた女性や、若く才能ある女性を称える「ウーマン・イン・モーション」プログラムを2015年に発足。毎年カンヌ国際映画祭で、映画界の表舞台、そしてその裏側で活躍する女性たちに光を当てた「ウーマン・イン・モーション」アワードと、前途有望な女性を支援するヤング・タレント・アワードの2つの賞を贈呈してきた。写真分野は2016年から始動し、若く才能ある女性を支援することを目的とした、アルル国際写真フェスティバルの「マダム・フィガロ賞」の後援を行ってきたほか、2019年には女性写真家への支援を強化するために、同フェスティバルと提携して「ウーマン・イン・モーション」フォトグラフィー・アワードを創設した。
フォトグラフィー・アワードではこれまで、1970年代よりマグナム・フォトで活動するアメリカのドキュメンタリー写真家、スーザン・メイゼラス（2019年受賞）、フランスのヒューマニズム写真運動で活躍したサビーヌ・ヴァイス（2020年）、公的および私的なアーカイブの写真を素材にインスタレーションなどを制作するアーティスト、ロサンジェラ・レンノ・ゴメス（2023年）など、写真史と共に生き、名を刻んだ女性たちが選ばれてきた。
2024年の同アワードは、日本人としては初となる石内都が受賞した。石内は1947年群馬県桐生市生まれ。1979年に「Apartment」で第4回木村伊兵衛写真賞を受賞し、母親の遺品を撮影した「Mother’s」で第51回ヴェネチア・ビエンナーレ日本館代表作家に選出された。ほか、フリーダ・カーロの遺品を撮影した「フリーダ 愛と痛み」や、2007年から撮影を続ける、被爆者の遺品を撮影した「ひろしま」シリーズも知られている。2013年に紫綬褒章受章し、2014年には「写真界のノーベル賞」と呼ばれるハッセルブラッド国際写真賞を受賞した。
ケリングは、石内を選出した理由をこう語る。
「女性というテーマは、石内の作品に繊細かつ力強く浸透しているものです。石内は、女性の身体を芸術の主題として取り戻すことで、女性の客観化を批評しています。彼女の写真は、主流メディアが示す美の基準に対して、不完全さや傷跡、加齢といったものを称えます。このような親密さを提示することで、石内は見る者に女性らしさや女性性についての自身の認識と向き合うよう促します。石内はその芸術活動において、女性の自立と代表を提唱することで、女性のエンパワーメントの原則を体現しています。そして彼女は写真を通して、現代社会におけるジェンダー、文化、記憶についての対話を促し続けています」
石内は、2024年7月2日、フランス・アルルで開催される「アルル国際写真フェスティバル」（7 月1日～9月29日開催）の会場で、賞が授与される。
そして、同フェスティバルでは石内の受賞を称えて石内の個展が開催されるほか、「ウーマン・イン・モーション」ラボとして、レスリー・A・マーティン、竹内万里子、ポーリーヌ・ヴェルマーレのキュレーションによる、日本における女性写真家の貢献にスポットを当てたグループ展「I’m So Happy You Are Here」がアルシュヴェシェ宮殿で行われる。さらに同展に関連して、A・マーティンとヴェルマーレによる日本人女性写真家の歴史に関する初の出版物『I'm So Happy You Are Here, Japanese Women Photographers from the 1950s to Now』（英語版はAperture社、フランス語版はTextuel社より刊行）が刊行される。
また同会場では、毎年京都市内各所で開催される国際写真祭のKYOTOGRAPHIEによるグループ展「Transcendence」をケリングが後援する。本展では、細倉真弓、岩根愛、鈴木麻弓、殿村任香、𠮷田多麻希といった気鋭の女性写真家が撮った親密なポートレートや心揺さぶる風景写真を紹介。写真というメディアを用いて現実を超越し、独自の物語を切り開く彼女たちの回復力、創造性、多様性を照らし出す。
アルル国際写真フェスティバル 2024
会期：7月1日（月）～ 9月29日（日）
会場：フランス・アルル各地
