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  • 2024.04.04

ロシアのプロパガンダ動画に多数の略奪美術品を確認。「そこ(ウクライナ)になかったとは言わせない」

ウクライナのヘルソン美術館は、クリミアの博物館で撮影し、ロシアで放送された「プロパガンダ・ビデオ」から、ロシア軍によって略奪された100点の所蔵品を確認したとSNSで発表した。

ヘルソン美術館がフェイスブックでシェアしたロシアのプロパガンダ・ビデオの画像。Photo: Courtesy Kherson Art Museum

2022年2月にロシアウクライナ侵攻が始まって以来、ロシア軍はウクライナの美術館・博物館の組織的略奪や文化遺産の破壊を行ってきた。2022年9月にロシア軍によって占領されたのち、11月にウクライナが奪還したヘルソン州では、ロシア軍が撤退時に「避難」という名目のもと数千点のヘルソン美術館のコレクションを略奪。ウクライナとロシアの美術品や装飾品を専門とするショフクネンコ美術館の貴重な美術品も持ち去られたという。

ヘルソン美術館のフェイスブック投稿によると、クリミアのタブリダ中央博物館で収録され、2023年9月にロシアで放送されたプロパガンダ動画の中に、これらロシア軍によって略奪されたとみられる100点の絵画と、戦争中に持ち去られたほかの品々が映っているのを確認したという。

その作品の中には、グラフィックデザイナー、教育者、そしてソビエト社会主義リアリズムの伝統を受け継ぐ画家として知られたイワン・シュルハの《Fishermen On The Seashore》(1932)や、水彩画家ヴェネラ・タカイエヴァの《Daughter of Guzel》(1967)、著名な風景画家で社会主義リアリズムのジャンル「厳格なスタイル」の創始者であるイェフレム・ズヴェルコフが1967年に制作した油彩があった。そのほか、クセニア・ステツェンコ、アナトリイ・プラトーノフ、アントニン・フォミンツェフの油彩3点も映っていたという。

イワン・シュルハ《Fishermen On The Seashore》(1932)

同館は、「略奪者たちは自らの手で犯行を記録した。これにより、盗まれた美術品の少なくとも一部の所在を突き止めることができた」とフェイスブックに投稿。しかし、プロパガンダ動画で確認した略奪美術品は100点に上るものの、ウクライナから持ち去られたと記録されている全美術品の1%にも満たないという。

タブリダ中央博物館があるクリミアは、2014年にロシアによってウクライナから不法に併合された黒海の半島だ。クリミアは東地中海の重要な出入り口であり、ウクライナとその同盟国はロシアの主権を認めておらず、併合されて以来、その回復を求める運動が行われてきた。

ヘルソン美術館はフェイスブックで、「絵画やグラフィック作品などの美術品──私たちが盗まれたと確認したもの全てが、ロシアの手にあることの紛れもない証拠。犯罪者たちに『それらはそこ(ウクライナ)にはなかった』と言わせないために、私たちはクリミアとヘニチェスク(ロシア側のヘルソン州の州都)からの写真やビデオで見たものすべてを記録している」とも述べている。

ロシアのウクライナ侵攻で、ロシア軍が略奪した美術品や文化財は1万5000点にものぼるとされる。その中には、最初に占領された都市のひとつ、マリウポリで奪われた紀元前4世紀にさかのぼる貴重なスキタイの金塊も含まれている。ウクライナの政治家たちは、これらの事件は民族のアイデンティティに対する攻撃であると糾弾している。またロシアは、第2次世界大戦後に締結された、文化財の「いかなる形態の窃盗」も禁じる「武力紛争の際の文化財保護のための条約(1954年ハーグ条約)」に署名しているが、それにも違反していることが批判されている。(翻訳:編集部)

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