今週末に見たいアートイベントTOP5: 内藤礼が縄文の土製品から見出す人間本来の力、布施琳太郎が描く「大地」と「性」の関係
関東地方の美術館・ギャラリーを中心に、現在開催されている展覧会の中でも特におすすめの展示をピックアップ! アートな週末を楽しもう!
1. 新しい印刷技術で超色域社会を支えるノーヒンです(ギンザ・グラフィック・ギャラリー)
架空の会社ノーヒンが描く技術の未来
アートディレクターの八木幣二郎による個展。デジタル・ネイティブと称される世代の、さらに後続世代である八木は、グラフィックデザインを軸にデザインが本来持っていたはずのグラフィカルな要素を未来から「発掘」。3DCG用ソフトウェアを駆使し、三次元(空間)を二次元(平面)に畳み込むような質感を追い求め、唯一無二のデザイン様式を創り上げてきた。
本展は、SF的な設定に基づく架空の印刷会社「NOHIN(ノーヒン)社」の コーポレート・アイデンティティを、「並行世界」の価値観とルールに基づいて、様々なアイテムや資料で展開する。また、地階の展示フロアでは八木が尊敬してやまない、日本のグラフィックデザイン史を彩る巨星デザイナー10名の傑作ポスター約20点と、それぞれのポスターを八木が再解釈した新作を展示している。
新しい印刷技術で超色域社会を支えるノーヒンです
会期:5月24日(金)~7月10日(水)
会場:ギンザ・グラフィック・ギャラリー(東京都中央区銀座 7-7-2)
時間:11:00~19:00
休館日:日祝
「ARTnews JAPAN」LINE公式アカウントでは、「今週末に見たいアートイベント」の更新情報をお届けしています。ぜひご登録ください!
2. 布施琳太郎「性と大地」(SNOW Contemporary)
布施琳太郎が描く「大地」と「性」の関係性
1994年生まれの布施琳太郎は、可視化されないが実在する意識の変容や違和感を絵画や映像作品を通じて顕在化させる、同世代アーティストの中でも特に高い注目を集めるアーティストだ。本展では、バーチャルな大地についての調査と思考を、日本語における「性」と関係づける。
その思考の対象として布施が選択したのは、砲台を備えた海上要塞である「海堡」。中でも100年以上前に横須賀市観音崎沖に建設された「第三海堡」を主題としている。会場には「性と大地」についての三種類の作品のほか、ビデオ通話の形式でつくられた映像や、鏡を支持体とした平面作品を展示する。それらを通じて、布施は受け継がれる神話や過去の事象と向き合いながら、今の時代特有の感覚を未来に向けて歴史に刻もうと試みる。
布施琳太郎「性と大地」
会期:5月31日(金)~7月6日(土)
会場:SNOW Contemporary(東京都港区西麻布2-13-12 早野ビル404)
時間:13:00~19:00
休館日:日~火祝
3. 柳宗悦と朝鮮民族美術館(日本民芸館)
朝鮮民族美術館100周年の歩み
朝鮮時代の工芸の美をいち早く見出した浅川伯教・巧兄弟と柳宗悦。今年は、彼らが現在のソウルにあたる京城に朝鮮民族美術館を設立してから100年の節目に当たる。本展はそれを記念し、100年の足跡を辿るとともに、当時集められた品々や歴代の展覧会の資料を紹介。世界で初めての朝鮮工芸の専門美術館・朝鮮民族美術館の意義を、改めて検証する。
また、展示期間中7月20日(土)には、東京藝術大学美術学部教授の片山まびによる講演会「朝鮮民族美術館についての新知見 ―2018年からの資料調査をもとに―」を開催する。
柳宗悦と朝鮮民族美術館
会期:6月15日(土)~8月25日(日)
会場:公益財団法人 日本民芸館(東京都目黒区駒場4-3-33)
時間:10:00~17:00(入場は30分前まで)
休館日:月曜
4. ICC アニュアル 2024 とても近い遠さ(NTTインターコミュニケーション・センター)
現代社会の「遠さ」と「近さ」を考える
新型コロナウイルスによるパンデミックの中、「ソーシャル・ディスタンス」は「新しい生活様式」の一つとなった。これまでの通信技術は、遠くにあるものを近くに感じさせるものとして構想、認識されていたが、ソーシャル・ディスタンスを経た現在の私たちにとって、それらの技術は「遠さ」を近づける一方で、「近づけなさ」を表象するものにもなっている。本展は、この時代の情報環境における、さまざまなリアリティの「遠さ」と「近さ」、そして、その変化についてアプローチした多様な作品を紹介する。
今回初めてコラボレーションを行なった青柳菜摘と細井美裕は、東京湾の人工島(埋立地)で映像と音声の収録を行ない、記録やアーカイブの残し方やあり方を構想するインスタレーションを制作した。たかくらかずきは、神祇信仰や島国的な自然崇拝をテーマにしたNFTキャラクターの作品群「ハイパー神社」シリーズから《ハイパー神社(蛇)》(2024)を披露する。ほか出品作家は出品作家は、木藤遼太、葉山嶺、古澤龍、リー・イーファン、ユーゴ・ドゥヴェルシェール、ウィニー・スーンなど。
ICC アニュアル 2024 とても近い遠さ
会期:5月31日(金)~7月6日(土)
会場:NTTインターコミュニケーション・センター [ICC](東京都新宿区西新宿3-20 東京オペラシティタワー4F)
時間:11:00~18:00
休館日:月曜
5. 内藤礼 生まれておいで 生きておいで(東京国立博物館)
内藤礼が土製品に見出す人間本来の姿
美術家、内藤礼は「地上に存在することは、それ自体、祝福であるのか」をテーマに、私たちが日々見過ごしがちな世界の片隅に宿る情景、知覚しがたい密やかな現象を見つめ、「根源的な生の光景」を見出す空間作品を生み出してきた。
本展は150年の歴史を持つ東京国立博物館の収蔵品と、その建築空間と内藤との出会いから始まる。縄文時代の土製品に自らの創造と重なる人間のこころを見出し、そこに「生の内と外を貫く慈悲」を感じたという。生の求めに迫られてつくり出された一つ一つの土製品は、人間本来の姿を私たちに伝えるようだ。時空を超えた交感がなされる会場は、空間よりも広く、時間よりも深く、目には見えない存在、耳では聞こえない声の確かさを感じ取る契機となるはずだ。
内藤礼 生まれておいで 生きておいで
会期:6月25日(火)~ 9月23日(月・祝)
会場:東京国立博物館(東京都台東区上野公園13−9)
時間:9:30 ~ 17:00(入場は30分前まで)
休館日:月曜(祝日の場合は翌日)7月16日、8月13日、9月17日