ジュディス・バトラーがSNS炎上を受け、パリでのイベント登壇を辞退。「自身の判断に基づく選択」
カリフォルニア大学バークレー校で教授を務める哲学者、ジュディス・バトラーがパリのポンピドゥ・センター主催の講演を中止すると発表した。3月に開催された講演会においてバトラーが、ハマスによるイスラエルへの攻撃は「武装抵抗」であったと語ったことでSNSで炎上したことが背景にあるようだ。
アメリカのジェンダー理論家で、哲学者のジュディス・バトラーは、イスラエル・ハマス紛争に関する発言に対する批判を受け、パリのポンピドゥ・センターで開催される講演会への出演を辞退した。
フランス国立近代美術館を含む複合文化施設であるポンピドゥ・センターは、「インテレクチュアル・イン・レジデンス」と題したイベントにバトラーを招いていた。この特別な取り組みは、2023年9月14日〜2024年1月25日まで実施される予定だったが、同館の2025年の閉鎖を巡り労働組合の職員が3カ月にわたり実施したストライキに会期が重なったため延期された。その後、ストライキは従業員とポンピドゥ・センター上層部との契約合意によって終結している。
バトラーはアート・ニュースペーパーに次のような声明を寄せている。
「(自身が講演に参加することで)アーティストや知識人による重要なプレゼンテーションに支障をきたしてしまうかもしれません。このため私は、イベントへの参加を辞退することにしましたが、他の登壇者には予定通り参加してほしいと伝えています。今回の決断は、こうした状況下で何が最善かという私自身の判断に基づく選択です。本当に素晴らしいイベントになると確信しているので、一般の方にもぜひ参加していただきたいです」
カリフォルニア大学バークレー校で教授を務め、アメリカのユダヤ人活動家組織「平和のためのユダヤ人の声」のメンバーでもあるバトラーは、3月3日にパリ郊外で行われたフランスのYouTubeチャンネル「Paroles d’Honneur」主催の講演会で、ハマスが10月7日に行った奇襲攻撃は「残虐」ではあったが、「テロ攻撃や反ユダヤ主義的な行動」ではなく、むしろ「蜂起」であり、「武装抵抗」であったと発言。これにより、反ユダヤ主義者として非難された。
その後フランスのニュースサイト「Mediapart」の取材に応じたバトラーは、「(ハマスによる攻撃を)政治的戦術として分析する」ためのコメントであり、「ハマスを支持したり、残虐行為を賞賛するものではない」とコメント。バトラーは、パレスチナに関する講演会が昨年12月にもパリで予定されていたが、パリ市議会によってキャンセルされている。また、2024年3月には、政治的対立のなかで喪に服すことの意味をテーマとした2つの講義がパリの高等師範学校で実施される予定だったが、こちらもシラバスから外されている。
「インテレクチュアル・イン・レジデンス」は4月24〜28日に再び延期され、プログラムの詳細は近日中に発表される見通しだ。(翻訳:編集部)
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