ゴッホの《夜のカフェテラス》を再現したカフェが脱税で営業停止。約1億6500万円の売り上げを申告せず
フィンセント・ファン・ゴッホの絵画《夜のカフェテラス》(1888)に登場するビストロを再現したカフェが、脱税によって2023年から営業停止している。経営者たちには懲役刑や経営禁止処分といった罰が与えられている。
フィンセント・ファン・ゴッホが描いたビストロを模して作られたフランス南部の街アルルのフォルム広場にあるカフェが、法的な理由により2023年7月から営業停止していることが明らかになった。
《夜のカフェテラス》(1888)は言わずもがなゴッホの代表作の一つで、彼がアルルに滞在している際に制作されたもの。カンバス上には、夜になって人気が少なくなったレストランの外観が描かれている。ゴッホは《夜のカフェ》(1888)も制作しており、こちらの作品には店内のビリヤード場が描かれている。
ゴッホが描いたカフェは実際にはアルルのフォルム広場にはなく、彼がかつて住んでいたラマルティーヌ広場付近に建てられていた。しかし、残念なことにこのカフェは連合国が第二次世界大戦に行った爆撃によって1944年に破壊されている。
ゴッホが描いた代表作をもとに店を作ろうと考えたのは、アルルに住む不動産デベロッパー、遺産保護活動家、ジャーナリストの3人の住民たちだ。彼らはマルセイユに拠点を置く実業家たちとともに2000年代初頭に構想を練り、のちにカフェ・ラ・ニュイのオーナーとなるローランド・ゼンムールと契約を結んだ。ゴッホの絵を細部まで再現したカフェは、ユネスコの世界遺産にも登録された。
その後、カフェ・ラ・ニュイは連日のように観光客で賑わってきたが、経営者たちは、税務調査があった際に書類を作成できておらず、過去3年間の棚卸し資産、証明書、そして領収書を提出していなかったという。カフェ・ラ・ニュイは売り上げを低く申告することで、付加価値税と事業税の支払いから逃れていたが、2012〜2014年にかけて100万ユーロ(約1億65000万円)の売り上げを申告していなかったとして告発された。
近所で店を経営する人はフランスの新聞『ル・モンド』に次のように語っている。
「作品の再現はかなりうまくできていました。店自体は、価格設定が高すぎる印象でしたが」
ゼムールは2021年に裁判所から5年間の経営禁止処分を受け、課徴金や違約金を含む未納税金の支払いを命じられている。また、2023年には裁判官によって10年間の破産宣告を受けた。ほかにも、経営者の一人であるラザール・ゼムールは執行猶予付きで1年の懲役刑が言い渡されている。(翻訳:編集部)
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