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「KYOTOGRAPHIE 2024」とセットで見たい関西の展覧会5選【鑑賞券プレゼントあり】

京都の街を舞台に繰り広げられる写真の祭典、「KYOTOGRAPHIE 京都国際写真祭 2024」が4月13日から始まった(5月12日まで)。関西ではこの春、約8年ぶりの村上隆の国内大規模個展や近年世界的な評価が高まるアイザック・ジュリアン展など、KYOTOGRAPHIEと並ぶ要チェックの展覧会が目白押しだ。まだまだ桜が見ごろの関西。週末はアート三昧なお出かけを楽しんでみてはいかがだろうか。

村上隆《お花の親子》(2020)とルイ・ヴィトンのトランクのインスタレーション Photo: Reiko Mitake Ⓒ2020 Takashi Murakami / Kaikai Kiki Co., Ltd. All Rights Reserved.

1. 京都市美術館開館90周年記念展 「村上隆 もののけ 京都」(京都市京セラ美術館)

「村上隆 もののけ 京都」展示風景、京都市京セラ美術館 2024年 Photo: KOZO TAKAYAMA ©2024 Takashi Murakami/Kaikai Kiki Co., Ltd. All Rights Reserved.

ほぼ新作の約170点。代表シリーズで辿る村上隆の創作の軌跡

「スーパーフラット」という概念を提唱し、現代美術シーンに重要な影響を与えた村上隆。村上の創作は、⽇本の伝統的な絵画表現とアニメや漫画、ゲームなどの⼤衆⽂化を結びつけただけでなく、戦前から戦後の⽇本⼈の感性や社会の様相、さらには資本主義経済や政治・宗教をもフラットに捉え、アートの本質的な意味を問いかけてきた。そして、国際的なアートシーンに日本独自の視点で挑み、高い評価を得てきた。

国内で約8年ぶりの⼤規模個展となる本展は、展示されている約170点のうち、およそ9割が本展のために描き下ろした新作だ。「DOB」「727」「お花」などの初期から現在までの代表シリーズが網羅され、新作展でありながら回顧展とも言えるラインナップとなっている。その中には、雲竜赤変図《辻惟雄先生に「あなた、たまには自分で描いたらどうなの?」と嫌味を言われて腹が立って自分で描いたバージョン》といった幅18メートルにおよぶ日本初公開の大作も含まれており、村上の展覧会に対する並々ならぬ意気込みが感じられる。また、村上が活動初期から深い関⼼を寄せてきた京都での開催にちなんで制作された、岩佐⼜兵衛が京の街を描いた《洛中洛外図屏風(舟木本)》のオマージュ《洛中洛外図 岩佐⼜兵衛 rip》や、「舞妓」「五山送り火」をモチーフにした平面作品も展示されている。同展は展示室を飛び出して、3月には同館の日本庭園に高さ13メートル超の⾦⾊に輝く巨⼤な彫刻作品《お花の親⼦》がルイ・ヴィトンのトランクとともに設置され、話題となった。日本で最後の個展とも言われており、この機会に是非見ておきたい。

 「村上隆 もののけ 京都」、「KYOTOGRAPHIE 2024」鑑賞券をセットで5名様にプレゼント。応募はこちら

京都市美術館開館90周年記念展 「村上隆 もののけ 京都」
会期:2月3日(土)~ 9月1日(日)
会場:京都市京セラ美術館 新館 東⼭キューブ (京都府京都市左京区岡崎円勝寺町124)
時間: 10:00 ~18:00(入場は30分前まで)
休館日:月曜(祝・休日の場合は開館)


2. アイザック・ジュリアン 「Ten Thousand Waves」(エスパス ルイ・ヴィトン大阪)

TEN THOUSAND WAVES 2010(アイザック・ジュリアン「Ten Thousand Waves」[エスパス ルイ・ヴィトン大阪]展示風景) 9スクリーンインスタレーション、デジタル変換された35mmフィルム、カラー、9.2サウンド Courtesy of the artist and Fondation Louis Vuitton, Paris © Jérémie Souteyrat / Louis Vuitton

2004年の遭難事故から生まれた美しくも悲しい映像譚を日本初公開

1960年ロンドン生まれのアイザック・ジュリアンは、84年にセント・マーチンズ美術学校を卒業。人種や階級、セクシュアリティにまつわる題材で映像作品を制作し続けている。昨年テート・モダンで大規模な回顧展を開催し、今、世界で最も注目されている作家の1人だ。

今回日本で初めての紹介となる《Ten Thousand Waves》(2010)は、9つのスクリーンからなる映像作品。2004年に、イギリス北部の海岸でわずかな賃金のもと貝を収穫していた違法就労の中国人労働者23名が潮流に呑まれて命を落としたモーカム湾の遭難事故を知り、なぜ彼らは遠い異国の地でこのような悲劇に行きついたのかという疑問と、遭難した船乗りが女神媽祖(マーツ―)に助けられたという16世紀の中国の伝説が呼応して生まれた。

女優マギー・チャン(張曼玉)や映像作家のヤン・フードン(楊福東)など中華圏の芸術界の主要人物や、ロンドンの音楽家ジャー・ウォブル、チャイニーズ・ダブ・オーケストラ、作曲家マリア・デ・アルべアールなどとの協働により制作されたこの作品は、16世紀の媽祖に助けられる船乗りの物語や1930年代の中国の街角、現代の都市の風景など断片的な映像が連なっていく。クライマックスは、クロマキー合成のグリーンバックの中で、ワイヤーにつながれた女神役のマギー・チャンが宙に舞う様子が映し出される。映像の作り方自体を見せることで作品を脱構築したというこのシーンは印象的であると同時に、全ては人間の手によって生み出されていることに気付かされる。

アイザック・ジュリアン 「Ten Thousand Waves」
会期:3月27日(水)~ 9月22日(日・祝)
会場:エスパス ルイ・ヴィトン大阪(大阪市中央区心斎橋筋2-8-16 ルイ・ヴィトン メゾン 大阪御堂筋5F)
時間: 12:00 ~20:00
休館日:ルイ・ヴィトン メゾン 大阪御堂筋に準ずる


3. モネ 連作の情景(大阪中之島美術館)

大阪展会場風景

モネの「連作」に焦点。印象派に至る過程も紹介

印象派の代表的な画家、クロード・モネ(1840-1926)は、自然の光と色彩に対する並外れた感覚を持ち、自然の息遣いが感じられる作品を数多く残した。モネは次第に、同じ場所やテーマに注目し、異なる天候、異なる時間、異なる季節を通して一瞬の表情や風の動き、時の移り変わりをカンヴァスに写しとる「連作」を制作するようになる。1874年に第1回印象派展が開催されてから150年の節目を迎えることを記念して開催される本展は、国内外のモネの代表作約70点が集結。モネの「連作」にスポットを当てる。

日本でも広く親しまれている〈積みわら〉〈睡蓮〉などをモチーフとした連作を紹介すると共に、サロン(官展)を離れて印象派の旗手として活動を始めるきっかけとなった、日本初公開となる人物画の大作《昼食》を中心に、印象派以前の作品も紹介。モネの革新的な表現手法の一つである「連作」に至る過程を追う。3月26日からは新たに《ジヴェルニーの積みわら、夕日》が加わり、 「積みわら」の作品を4点一度に見られるようになった。

モネ 連作の情景
会期:2月10日(土)~ 5月6日(月・休)
会場:大阪中之島美術館 5階展示室 (大阪市北区中之島4-3-1)
時間: 10:00 ~18:00(4月27日~5月6日は19:00まで、入場は30分前まで)
休館日:会期中無休


4. リニューアルオープン記念特別展「シン・東洋陶磁―MOCOコレクション」(大阪市立東洋陶磁美術館)

国宝 油滴天目茶碗 南宋時代・12-13世紀 建窯 高7.5cm、口径12.2cm 大阪市立東洋陶磁美術館(住友グループ寄贈/安宅コレクション)写真:六田知弘

2年ぶりにリニューアルオープン!国宝「油滴天目茶碗」の特別ケース展示は必見

住友グループの寄贈による「安宅コレクション」や、李秉昌(イビョンチャン)博士の寄贈による「李秉昌コレクション」を中心とした、良質な東洋陶磁コレクションを持つ同館が、約2年の改修工事を終えてこの春リニューアルオープンした。

リニューアル記念で開催される本展は、同館の東洋陶磁コレクションの名品の中から、代表的な約380件(国宝2件、重要文化財13件を含む)を一堂に集めた。中でも注目は、国宝「油滴天目茶碗」の特別ケースによる展示だ。ケースは独立しており、茶碗の内面を浮かび上がらせるスポット照明や、透明度の高い高透過ガラスなどにより、国宝の美しい斑文と繊細な光彩を360度で楽しむことができる。そのほか、江戸時代の大坂の豪商・鴻池家に伝来した、形、色、模様全てが「完璧」と言われる元時代の青磁の花瓶、国宝「飛青磁花生」や、韓国陶磁随一の誉れ高い「青花辰砂蓮花文壺」など、同館でなければ見られない名品の数々が並ぶ。

リニューアルオープン記念特別展「シン・東洋陶磁―MOCOコレクション」
会期:4月12日(金)~ 9月29日(日)
会場:大阪市立東洋陶磁美術館(大阪市北区中之島1-1-26)
時間: 9:30 ~17:00(入場は30分前まで)
休館日:月(祝日の場合は開館)、5月7日、7月16日、8月13日、9月17日、9月24日


5. スーラージュと森田子龍(兵庫県立美術館)

ピエール・スーラージュ《Brou de noix sur papier 63 x 50 cm, 1949》1949 年、スーラージ ュ美術館 © Adagp, Paris/ Photo : musée Soulages, Rodez/Christian Bousquet

スーラージュと森田子龍。2人の交流と創作に迫る

画業の最初期から晩年に至るまで、一貫して抽象を追究したフランスの国民的画家、ピエール・スーラージュ(1919-2022)と、兵庫県豊岡市に生まれ、世界的に知られる前衛書家として活躍した森田子龍(1912-1998)。1950年代から続いた2人の交流に焦点を当てた、世界初の展覧会だ。

スーラージュの故郷、フランス・ロデーズにあるスーラージュ美術館の全面的な協力により開催される本展では、2人の作品合わせて約50点に加え、書籍や日記などの資料を通して、芸術家の出会いを考える。スーラージュ美術館から出品される17点のうち16点は日本初公開。もう1点は、1951年に日本で初めて展示されたスーラージュの作品で、約70年振りに来日する。国際交流は何をもたらし、文化的なアイデンティティはいかにして生まれるのかを考える。

スーラージュと森田子龍
会期:3月16日(土)~ 5月19日(日)
会場:兵庫県立美術館(神戸市中央区脇浜海岸通1-1-1)
時間: 10:00 ~18:00(入場は30分前まで)
休館日:月曜(祝日の場合は開館、翌日休館)

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