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ヴィヴィアン・ウエストウッドの私蔵品がオークションへ。ファッション史に残るドレスなど200点を出品

2022年12月29日に死去したファッションデザイナー、ヴィヴィアン・ウエストウッド自身が所蔵していた作品が、6月25日に開催されるクリスティーズ・ロンドンのライブ・オークションと、6月14日から28日までのオンライン・セールに出品されることが発表された。

1998年11月17日ロンドンのヴィクトリア・アンド・アルバート博物館で開催されたパーティにて。左からミック・ジャガー、ヴィヴィアン・ウェストウッド、ジェリー・ホール、ホールとジャガーの娘のエリザベス・ジャガー。この時ウェストウッドが着用した1998-99年秋冬コレクションのドレスがオークションに出品される。Photo: Dave Benett/Hulton Archive/Getty Images

今回のセールは、ヴィヴィアン・ウエストウッドの夫でありデザイン・パートナーのアンドレアス・クロンターラーが主催するもので、売り上げの一部はウェストウッドが設立したヴィヴィアン財団や、アムネスティ・インターナショナル、国境なき医師団に寄付される。

出品されるのは、40年にわたるウェストウッドのキャリアを象徴する代表作の数々。しかも、彼女本人が大切に所蔵してきたドレスやジュエリー、アクセサリーなど、合計200点を超える作品。中には、キース・ヘリングに影響されて生まれた最初期の作品のひとつ「ウィッチーズ」(1983-84年秋冬コレクション)や、ハリス・ツイードを用いたウェストウッドの代名詞的アイテム「ラブジャケット」(1987年)、腰の後部にボリュームを出すバッスルスタイルを復活させた「オン・リバティ」(1994年秋冬コレクション)など、ファッション史に残る名作が多数含まれている。

彼女が死去した時、イギリス史を専門とする社会史家ジェーン・マルヴァグはアート・ニュースペーパーの取材に対し、ウェストウッドの実に自由で多彩な芸術的センスをこう称えた。

「16世紀ドイツの著名な武器職人、コルマン・ヘルムシュミッドによる鎧兜に着想を得てハリス・ツイードのジャケットを作り、ブーシェの《Venus and Vulcan》(1754)の天使をコルセットやレインコートにあしらったと思ったら、キース・ヘリングが1980~81年に制作したニューヨークの地下鉄の落書きをコットンのストリートウェアにプリントする。彼女の美術館での回顧展を見ようとする群衆が後を絶たないのも不思議ではないし、彼女のヴィンテージ作品が何千ポンドもするのも不思議ではない」

また、オークションにはウェストウッドが晩年取り組んでいた環境保護活動に関するアイテムも出品される。2017年、ウェストウッドは「A Strategy 2 Save the World(世界を救う戦略)」として、気候変動、社会的不平等、人権など、人類が直面する差し迫った問題を題材にした1組のトランプをデザインした。彼女は亡くなる直前、この2017年の「トランプ」から最も力強いグラフィックを10点選び、拡大したものにサインをしていたのだが、それらを手刺繍の箱に収めた「THE BIG PICTURE - Vivienne's Playing Cards」が、環境保護団体グリーンピースへの寄付を募るために立ち上げたプロジェクトの一環として制作された。この作品の予想落札額は3万~5万ポンド(約579万円~965万円)。

出品アイテムは、ロンドンのクリスティーズ本社で6月14日から24日まで展示される。

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