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ビリー・アイリッシュがルーブル美術館のガラスピラミッドにドボン! 新譜の偽プロモ動画が大バズり

ビリー・アイリッシュが、5月17日に3枚目となるアルバム『HIT ME HARD AND SOFT』をリリースした。そのプロモーションをルーブル美術館で行ったとする偽動画がX(旧Twitter)で拡散され、これまでに150万回再生されている。

2024年5月15日、ニューヨークのバークレイズ・センターで行われた新アルバム『HIT ME HARD AND SOFT』のリリース・リスニング・パーティーでパフォーマンスするビリー・アイリッシュ。Photo: Getty Images For ABA

5月17日にビリー・アイリッシュがリリースしたアルバム『HIT ME HARD AND SOFT』は、Apple Music アルバム・チャートで日本を含む80の国と地域で1位を獲得し、Spotifyでは初日に全世界で7200万回再生され、ビリー史上最大の記録を樹立した。

ローリング・ストーン誌は、新譜を「より遊び心に溢れ、よりキレがあり、相変わらず素晴らしい」絶賛したほか、Vulture誌は、アルバムの2曲目「Lunch」を 「スパイスの効いたクィア・アンセム 」と評した。ビリーは昨年、ヴァラエティ誌の「Power of Women」号のインタビューでクィアであることをカミングアウトしている。

そんな世界的ヒットを飛ばしている『HIT ME HARD AND SOFT』だが、そのゲリラプロモーションをルーブル美術館で行ったとされる動画がX(旧Twitter)に投稿され、これまでに150万回再生されている。

動画には、ルーブル美術館の外にあるイオ・ミン・ペイが設計したガラスのピラミッドに投影される映像を人々が見守り、または動画を撮る様子が映し出されている。ピラミッドは青い水で満たされていき、突然上部に白い扉が出現。開いた扉から黒い衣装で黒髪のビリーが現れて水の中に落ちるという内容で、これはビリーの新譜のイメージ動画がそのまま使われている。

動画はポップカルチャー専門サイト@PopCraveが投稿したもので、Xユーザーたちは「とてもいいプロモーション」「彼女のマーケティング・チームは昇給に値する!」など次々に賞賛のコメントを寄せた。しかしこのプロモーションは実際には行われてはいない。投稿の概要欄には、「これは、フランスのビデオグラファー、@natoogramがインスタグラムに投稿した動画をデジタル加工したものです」と明記されているのだ。

おそらく@natoogramは、今年3月に実施されたビヨンセの新アルバム『Cowboy Carter』のプロモーションにインスパイアされたのだろう。このキャンペーンは、グッゲンハイム美術館、ホイットニー美術館、ニューミュージアム、芸術デザイン美術館といったニューヨークの美術館に、ゲリラ的にテキストを投影するというものだ。その中でフランク・ロイド・ライトが設計したグッゲンハイム美術館の曲線の壁には、「これはカントリーアルバムなんかじゃない。『ビヨンセ』のアルバムだ」というフレーズが映し出された。

ルーブル美術館で行ったプロモーションの偽動画を多くの人々が信じたのには理由がある。ビリーは過去、数々のアーティストコラボレートし、アートとの親和性の高さをアピールしてきたからだ。村上隆とは2019年にリリースされた新曲PV「You Should See Me In A Crown」でタッグを組み、彼のトレードマークであるポップな花のモチーフと、アニメのキャラクターに扮したアイリッシュが共演。独特な世界観を醸し出した。また、2020年3月のUS版ヴォーグの特集では、メディアアーティストのシュー・ジェンの、人間が宙に浮いているようなパフォーマンス《In Just A Blink Of An Eye》を彼女が再現した写真が掲載されている。そして、2023年3月に開催された第95回アカデミー賞授賞式のアフター・パーティでは、アーティストのJRとコラボレーションして世界中の注目を集めた。

ビリーやルーブル美術館側は今回の件に何もコメントしておらず、US版ARTnewsは@natoogramことナタリー・オジエレジコに取材を申し込んだが、返事はまだ来ていない。(翻訳:編集部)

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