アイ・ウェイウェイの集大成展がアメリカで来年開催!「論争からは逃げない」と学芸員は明言
アイ・ウェイウェイ(艾 未未)の大規模な回顧展が2025年にシアトル美術館で開催されることが発表された。アメリカでの回顧展開催は約10年ぶりとなる。
アイ・ウェイウェイの回顧展「Ai, Rebel: The Art and Activism of Ai Weiwei(アイ、反逆者:アイ・ウェイウェイのアートとアクティヴィズム)」が、2025年3月12日から9月7日までシアトル美術館で開催される。アメリカでのアイの回顧展は、2012年のワシントンD.C.のハーシュホーン美術館・彫刻庭園が最後で、批評家の絶賛と大勢の観客を動員する大ヒットとなった。
10年以上ぶりのアメリカ開催となる今回は、100点以上の代表作が大集結する予定で、アイの数十年にわたるキャリアを振り返る。キュレーションは、シアトル美術館の中国美術担当学芸員であるフォン・ピン。US版ARTnewsの取材に対してフォンは、「この展覧会はアイ・ウェイウェイのアートとアクティビズムの両方を紹介しながら、両者の交差点を探求するものになります」と語った。
フォンの言う通り、アイ・ウェイウェイの創作には「アクティビズム」の言葉が欠かせない。アイが中国の漢時代の壺を落として割る一連の動作を写した《漢時代の壷を落とす》(1995/2009)は、権力によって文化遺産の価値や歴史の重要性が変えられ得ることへの批判としても解釈できる。また、広大なテート・モダンのタービンホールにヒマワリの種の模造品を1億個以上を敷き詰めた2010年のインスタレーションは、中国共産主義のプロパガンダの象徴であるヒマワリと、自身の幼少期の貧困の象徴であったヒマワリの種を結びつけた。また、昨年はモネの三連画《睡蓮》をレゴブロックで制作したが、その片隅にある暗部は、1960年代の文化大革命時、新疆ウイグル自治区へ強制移住させられたアイと父親のアイ・チンが住んでいた砂漠の穴ぐらを表現したものだ。
フォンは、「(展覧会では)アイの人生における重要な瞬間、つまり彼の人生の物語と、アートそのものとのバランスを取ろうと考えています。なぜ我々はまだアイの作品を見続けているのか? 何がそんなに私たちにインパクトを与えるのかを明らかにしたい」と意欲的だ。
また今展では、まだあまり紹介されていない、アイがその大半をアメリカで過ごした1980年代から90年代の創作に光を当てることもひとつの目標だという。アイはその時期、マルセル・デュシャンやアンディ・ウォーホルに大きな影響を受けながら、作家性に疑問を投げかけ、中国移民としての立場やエイズ危機など、さまざまな社会問題を呼び起こすコンセプチュアル・アート作品を制作した。この時期の創作は、2022年にウィーンのアルベルティーナ美術館で開催された大規模な回顧展で多数紹介されたが、アメリカで大々的に特集される機会はなかった。
現代アートとは畑違いの中国の古美術を専門とするフォンを起用したのは、異例の抜擢とも言える。しかし彼女は、これまでの経験がアイの研究に役立ったと話す。「私が展覧会で意図しているのは、時の試練に耐えてきたもの。活動初期の10年間に彼が考え、何十年も経った今でも彼の中にある傾向やパターンを表す言語を見つけたい」と抱負を語る。
アイの言動には論争がつきまとう。例えば2010年には、四川大地震で校舎の下敷きになり児童が死亡したことについて中国政府を批判し、当局に拘束された。また2023年11月には、ハマスによるイスラエルへの攻撃に関するSNS投稿を行なったことで、リッソン・ギャラリーがアイの個展開催を保留にしている。だからこの展覧会も一筋縄ではいかないかもしれない。しかしフォンは、アイを巻き込んだ様々な論争からは逃げるつもりはないと語り、「彼は反抗的で挑発的ですが、それが彼の仕事です」と続けた。
今のところ、シアトル美術館での展示が巡回されるかどうかは決まっていないが、フォンはそれを望んでいる。(翻訳:編集部)
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