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アレクサンダー・カルダーの個展が35年ぶりに東京で開催! 「ファンでなくとも虜になるはず!」

キネティックアートの先駆者の一人であるアレクサンダー・カルダーの個展「カルダー:そよぐ、感じる、日本」が麻布台ヒルズ ギャラリーでスタートした(9月6日まで)。斬新なセノグラフィーも奏功し、カルダー作品への固定観念を打ち破る驚きと発見に満ちた展示は必見だ。

Installation view of Calder: Un effet du japonais, Azabudai Hills Gallery, 2024 Photo: Tadayuki Minamoto

5月30日から9月6日まで麻布台ヒルズ ギャラリーとペースギャラリーとの共催で開催されるアレクサンダー・カルダーの個展、「カルダー:そよぐ、感じる、日本」。35年ぶりに東京で開催されるこのカルダー展では、彼の代表作である「モビール」をはじめに、ドローイングや油彩画など、カルダー財団に所蔵されている約100点が公開される。

針金を曲げたりねじったりすることで、立体的な人物を空間に「描く」という新たな彫刻の手法を編み出し、芸術活動をスタートさせたカルダー。そんな彼は、つるされた抽象的な構成要素が、絶えず変化する調和のなかでバランスを保ちながら動くモビールの発明で知られるようになる。

アレクサンダー・カルダー《Black Beast》(1940)。Photo: Ken Adlard

モビールの重要な要素として「動き」を用いたカルダーは、キネティックアート(キネティックとは動力学的な、動的な、という意味)の先駆者の一人と呼ばれる。初期のモビールには、モーターによって駆動する作品もあったが、機械駆動させる作品を制作するのではなく、気流や光、湿度、人間の相互作用に反応する作品を次第に手がけるようになった。こうした作品以外にもカルダーは、絵画やドローイング、版画、宝飾品をはじめに、数多くの作品を手がけており、1950年代以降にはボルトで固定した鉄板を使った屋外彫刻の制作に注力したという。

7月から麻布台ヒルズにオープンするペースギャラリーと共催で開催される本展は、アメリカのモダンアートを代表するカルダーの芸術作品における日本の伝統や美意識との永続的な共鳴をテーマにしているという。ペースギャラリーのCEO、マーク・グリムシャーが愛と信頼を込めて「crazy!」と絶賛する展示スペースのセノグラフィーを、カルダー財団の理事長であり本展のキュレーターを務めたアレクサンダー・S.C.ロウワーとともに手がけたのは、ニューヨークに拠点を置く建築家の後藤ステファニー。カルダーが同時代の建築家たちと協働していた精神にならい、3:4:5の直角三角形に基づいて展示空間は設計されており、木や紙、漆喰といった日本建築の要素や素材がスペース内に組み込まれている。

本展覧会の開催に先立って来日したロウワーに、「これまで自分が勝手に抱いていたカルダー観を覆すような展示」と伝えると、ロウワーは得意げな笑顔を浮かべ、こう語った。

「今回の展示に訪れた皆さんには、カルダーの新たな一面を感じ取っていただけるでしょう。彼の内側でたぎっている感情やエネルギーを目の当たりにすると、約80年前の作品でも真新しさが感じられます。カルダーの作品に特別な関心をもっていなかった人も、彼の虜になるに違いありません!」

「カルダー:そよぐ、感じる、日本」
会期:5月30日(木)〜9月6日(金)
会場:麻布台ヒルズ ギャラリー
時間:10:00-18:00(月〜木、日)、10:00-19:00(金、土、祝前日)
休館日:6月4日(火)、7月2日(火)、8月6日(火)

All works by Alexander Calder
All photos courtesy of Calder Foundation, New York / Art Resource, New York
© 2024 Calder Foundation, New York / Artists Rights Society (ARS), New York

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