骸骨は「エクジンガー」と命名。ドイツで新石器時代の部族長の骸骨と豪華な副葬品が出土
ドイツ・バイエルン州で、6800年前の墓から多数の副葬品と共に男性の骸骨が見つかった。同州では最古のものであり、考古学者らは「センセーショナルな発見」と喜びを語っている。
2024年4月中旬からある建設プロジェクトに伴う考古学調査が行われていたドイツ・バイエルン州エクジング地区から、多数の副葬品と骸骨が発見された。骸骨は男性で、およそ6800年前の新石器時代のものと推定される。しゃがませた状態で埋葬されており、身長は約1メートル70センチと当時としては異例の高身長だった。骸骨の周囲からは、埋葬儀礼の際に染料入れとして使われた黒鉛の鉢や酒器、石斧、そしてイノシシの牙を2分割し、焼いたもので飾られた小さな袋が見つかった。
考古学者たちはこれらの副葬品から、人物はおそらく中年で、手の込んだ埋葬をされていたことから、部族長のような指導者階級にあったと推測している。
今回の発掘調査を率いたフロリアン・エイブルは、「小さな袋の中には、ライターとしての役割を果たす黄鉄鉱や火打石が入っていたと考えられます。袋に飾られたイノシシの牙は、イノシシを狩る危険性から、高い実力と身分を象徴するものでした。牙が多量にあるので、彼は世襲ではなく、自らの力で地位を獲得したと考えられます」と説明する。そして、「バイエルン州に、この時代の遺骨が残る墓は10基もないでしょう」と今回の発見の希少性を強調した。
この骸骨は、考古学者たちにより「エクジンガー」と名付けられた。彼が生きた新石器時代は紀元前1万年から紀元前2千年まで続き、狩猟採集社会を築いていた人類が農耕と酪農を取り入れ、集落を築くようになった重要な時期だ。同州では、同じく新石器時代にあたる約5300年前にバイエルン州の氷河で死亡した、この地域最古のミイラ「エッツィ」が見つかっており、貴重な研究資料となっている。それよりも1500年も古い「エクジンガー」の発見により、同州に定住し、耕作を開始した人々の生活がさらに明らかになるかもしれない。
同地区を統括する行政官のヴェルナー・ブーメダーは今回の発見について、声明で、「このセンセーショナルな発見は、この地域に肥沃な土壌があったことを示しています。これにより、私たちは過去をもう少し掘り下げることができるでしょう」と喜びを語った。(翻訳:編集部)
from ARTnews