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4500年前の石造物の破壊動画をSNSに投稿。「考古学上の謎を解く鍵は永遠に失われた」

今年に入り文化財の破壊行為が相次ぐ中、イギリス・ウェールズで発掘された約4500年前の遺物の一部が傷つけられ、風雨にさらされたまま放置されるという事件が起きた。しかも犯人は、その破壊行為の動画をSNSに上げていた。

ウェールズの発掘現場で破壊行為に遭った古代の石造物。Photo: Courtesy Wales News Service

古代遺物の破壊行為を動画で撮影し、フェイスブックに投稿したのは、イギリス・ウェールズの町、ケアフィリの北西にあるアベルトリドゥル村に住む52歳のジュリアン・ベイカーだ。発掘はEglwysilanと呼ばれる丘陵地にある遺跡で行われていた。

起訴されたベイカーは、この種の訴訟としてはウェールズで初めて、修復費用として4400ポンド(約80万円)の支払いを命じられた。さらに、ウェールズの治安判事裁判所から2年間の執行猶予付きで4カ月の禁固刑が言い渡されたとBBCが報じている。

発掘された石造物は2つの大きな砂岩からできており、表面には「謎の」盃状穴が彫られていた。専門家は、この石が「道標あるいは領地の境界線を示すものだったのではないか」と推測している。

この石造物の表面を剥がしているところを動画で確認されたベイカーは、「指定記念物に対して影響を及ぼす無許可の作業」を行い、「保護すべき古代遺物を破壊または損傷」した罪で起訴された。

「今回の被害は、ウェールズでも非常に貴重な部類に属する先史時代の遺跡で起きた重大な事件です」と、ウェールズ政府の文化遺産管理組織Cadwの広報担当者はBBCの取材に答え、こう語った。

考古学上の謎を解くための重要な情報は永遠に失われました。いくつかの手がかりは残っているかもしれませんが、損傷を受けた遺跡の一部の重要性と価値は著しく低下したと言わざるをえません。今回の一件は、1979年に制定された古代記念物および考古学的地域法第28条に基づいて行われた初めての訴訟でしたが、裁判所の出した決定には満足しています」(翻訳:石井佳子)

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