訃報:三島喜美代が91歳で死去。「ゴミ」の陶作品で情報化社会に切り込んだ現代美術家
空き缶や新聞、雑誌などを陶で表現した作品で知られる現代美術家・三島喜美代が6月19日に死去した。91歳だった。
現代美術家の三島喜美代が6月19日に病気のために死去したことが報じられた。葬儀は近親者で営まれたという。91歳だった。
三島は1932年大阪府生まれ。1950年代から60年代にかけて独立美術協会主催の独立展に参加し、油彩やコラージュなどの平面作品を制作していたが、70年代には立体作品に移行。独学で陶制作を学び、いわゆるゴミとして捨てられる新聞や空き缶などの印刷を、割れる素材である陶に転写した独自のスタイルを生み出した。これには現代社会に溢れる情報への危機感や、情報化社会そのものが表現されているが、同時に「新聞紙が割れる面白さ」という、三島独特のユーモアも込められている。
地元大阪市と岐阜県土岐市を長年拠点にしてきたが、有限である陶土の代わりに、溶融スラグと廃土を混ぜた土を使ったり、自ら収集した鉄くずやブリキ缶など、ゴミそのものも作品に取り込んだダイナミックな作品を制作するなど、時には手伝いに来た若手アーティストたちの手を借りながら最晩年までチャレンジングな創作活動を続けた。
現在、三島の大規模個展「三島喜美代―未来への記憶」が練馬区立美術館で開催されており(7月7日まで)、同館は6月27日、ホームページとX(旧ツイッター)で三島の死を悼んだ。
三島の作品は、東京・天王洲の「東横イン 品川駅港南口天王洲アイル」入り口のパブリックアート《Work 2012》(2012)のほか、大田区にある「ART FACTORY 城南島」で、1900年から2000年までの100年間の記事を転写した1万1000個のレンガを敷き詰めた《20世紀の記憶》(1984-2013)などを見ることができる(城南島の展示は、作品の一部を練馬区立美術館で貸し出しているため現在休止中)。