ナイキがトム・サックスとのコラボを復活。「マーズ ヤード」最新作で業績回復を狙う?
トム・サックスのハラスメント疑惑を受けてパートナーシップを解消していたナイキが、2年ぶりとなるコラボスニーカーを今秋発売すると発表した。

ナイキとトム・サックスのコラボスニーカーが今秋、2年ぶりに復活することが明らかになった。トム・サックスをめぐっては、2023年3月に米Curbed誌が元アシスタントらの告発として、スタジオでのセクハラ疑惑やいじめ、低賃金などを報じたことからアート業界内外で騒動に発展した。
サックスのハラスメントをめぐる問題は、芸術団体の支援や求人情報が公開されている「ニューヨーク芸術財団(NYFA)」に掲載された「著名なアート一家」のエグゼクティブ・アシスタント募集広告によって明るみに出た。求人情報には、低い給与に見合わない大量の仕事内容が記載されており、アート業界では、雇用主はサックスと彼の妻で元ギャラリーディレクターのサラ・フーバーではないかとの憶測が広がった(ライフスタイルメディアのCurbedが公開したレポート記事によると、サックスのスタジオに務めた従業員たちは、秘密保持契約を結ばされていたという)。
Curbed誌は同じ記事の中で、元従業員らの証言として、サックスのスタジオは「暴力的で恐ろしい場所」であり、サックスは攻撃的な言葉を使う傾向があること、政治的抑圧にまつわる芸術的関心に由来する、眉をひそめるような慣行をしばしば行っていることを暴露していた。
これを受けサックスは、2023年5月にニューヨーク・タイムズ紙の記事の中で謝罪し、ハラスメント疑惑について言及するとともに、自身のスタジオの労働環境改善に取り組むことを約束。ナイキは、この謝罪記事が公開される直前に、サックスとのコラボレーションを一時的に解消したと発表している。
コラボレーション最新作は?
サックスとナイキとのコラボレーションが始動したのは2012年。以後、10余年にわたる蜜月の中で両者は、「トム・サックス × ナイキ クラフト マーズ ヤード」シリーズや「ジェネラル・パーパス・シュー」といった限定商品を発表した。
サックスはナイキとのコラボレーションを開始して以来、自身の作品とラグジュアリーブランドとのつながりについて公に語るようになった。2014年には、ニューヨーク・タイムズが主催するラグジュアリー・カンファレンスで講演を行い、自身の制作活動や作品は、ブランディングや消費文化、政治的暴力の間に立脚していると語っている。
さて、今秋2年ぶりに復活するサックスとナイキの最新コラボレーションでは、「トム・サックス × ナイキ クラフト マーズ ヤード 3.0」が発売される予定だ。ナイキは2024年12月に発表した2024年9-11月期決算の中で、コロナ禍以降、最大となる前年比7.7%の減収率を報告しており、その主たる理由の一つに通販売上の落ち込みを挙げていた。はたしてサックスとのコラボ商品は、同社の業績回復のきっかけを作ることができるのか。(翻訳:編集部)
from ARTnews