ARTnewsJAPAN

国家的マネーロンダリングの罪で主犯に資産160億円の返還命令。ウォーホルやモネの作品も

マレーシアの政府系投資会社1MDBの汚職事件をめぐり、主犯格の一人であるジョー・ローに対して資産およそ160億円の返還命令がこのほど下された。ローは、2013年にはバスキアの《Dustheads》を当時の最高落札額で入手するなど、熱心なアートコレクターとして知られている。

Photo: Robyn Beck/AFP via Getty Images

米司法省は、マレーシアの政府系投資会社1マレーシア・デベロップメント(1MDB)で起きた国家的資金流用事件をめぐる和解策として、実業家のジョー・ロー及びその家族、そして彼が設立した信託事業メンバーに対し、アンディ・ウォーホルや、クロード・モネの美術品を含む1億ドル(約160億円)以上の資産の返還を命じた。同省が発表した声明によると、今回の合意によって二つの民事没収事件が解決したことになる。

1MDBは、海外からの直接投資や国際的な提携を通じてマレーシアの経済発展を促進するため、マレーシア政府によって設立された政府系ファンドだ。

今回の民事訴訟では、ローと彼の家族がマネーロンダリングや贈収賄によって1MDBから不正流用した資産が争点となった。2009〜2015年の間に提出された訴状には、1MDBが所有する45億ドル(約7216億円)以上の資金が同社の上層部とローを含む関係者によって不正に流用されたと記されている

米司法省によると、返還されるウォーホルとモネの作品の価値は3500万ドル(約56億1145万円)。それらに加え、現金と不動産でおよそ6700万ドル(約107億4200万円)が受け渡される見通しだ。

カリフォルニア中部地区の連邦地方裁判所に提出された書類によると、返還されるウォーホルの作品は《キャンベルスープの缶(エメラルド・グリーン)》(1965)で、モネの作品は《Vétheuil au Soleil》だという。

アメリカ政府は、過去に1MDBの弁護士を務めていたルー・アイ・スワンが2014年5月、ゴールドマン・サックスが引き受けた債権販売から不正流用してクリスティーズからパブロ・ピカソの鉛筆画《Trois femmes nues et buste d’homme》(1969)を138万ドル(現在の為替で約2億2200万円)で購入したとして起訴している

ローは、クリスティーズ・ニューヨークでジャン=ミシェル・バスキアの《Dustheads》(1982)を2013年に当時の最高落札額である4350万ドル(現在の為替で約70億円)で落札したり、サザビーズ・ロンドンからモネの《睡蓮》(1906)を5390万ドル(同86億円)で購入するなど、美術品を高額落札してきたことで知られてもいる。

今回の訴訟に関連してアメリカ政府は、ゴッホの《La Maison de Arles》、モネの《睡蓮》を売却したことで得た2530万ユーロ(約43億4000万円)の利益、ピカソの《Nature morte au crâne de taureau》、バスキアの《Redman One》と《Self-Portrait》、ウォーホルの《Round Jackie》、ダイアン・アーバスの《Boy With the Toy Hand Granade》、そしてモネの《Saint Georges Majeur》といった美術品関連に対して差押え命令を出している。(翻訳:編集部)

from ARTnews

あわせて読みたい