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  • 2024.06.28

NY在住アーティストの過半数が年収400万円以下。最新調査で多くが自身の経済状況を「悲惨」と回答

ニューヨークに住むアーティストの56%が平均およそ400万円以下の年収で生活していることが、アーティスト支援団体「Creatives Rebuild New York(CRNY)」による調査から明らかになった。アーティストとしての収入だけでは制作スペースや居住地の確保ができないことから、契約労働やギグワークによる収入に頼っているという。

ラッチフックでラグを制作するアーティストのジャシンタ・バンネル。Photo: Michael Wilcock/Courtesy of Creatives Rebuild New York

ニューヨークに住むアーティストの半数以上が年収2万5000ドル(約403万円)を下回っていることが、最新の調査結果から明らかになった。また、3分の2の人々は生活防衛資金を貯められておらず、半数以上のアーティストが契約労働、あるいはギグワークによる収入に頼っているという。

この結果は、「Creatives Rebuild New York(CRNY)」が2022年2月から5月にかけて実施した包括的な調査によって判明しており、上記の収入状況は、13,300人以上の回答者から集まった上位の回答だ。同団体は、アーティストを労働者と認めるよう啓蒙活動を実施する以外にも、安定した収入と雇用機会を確保するためのプログラムを運営している

CRNYのエグゼクティブ・ディレクター、サラ・カルデロンは、2年前に実施された調査「Portrait of New York State Artists(ニューヨーク州に住むアーティストの現状)」は、ニューヨーク州の経済に芸術が7.4%ほど貢献しているにもかかわらず、「アーティストたちがどういった生活水準で暮らしているかが明かされていなかった」ことから実施されたと話す。

この調査では、回答者に対し、芸術活動、財政、心身の健康、住宅、緊急財政支援、新型コロナウイルス感染症のパンデミックによるさまざまな影響、人口統計情報や地理情報などが質問された。調査結果には、運営するプログラムを改善する方法や、コロナ禍においてアーティストがどれだけ苦境に立たされていたのか、といった情報も詳しく記されている。「この調査で、アーティストたちがどれだけ苦しんでいるかが可視化されました」とカルデロンは続ける。

資金難にあえぐビジュアルアーティスト

調査に回答した75%以上のアーティストはニューヨーク市内に住んでおり、42.4%は25〜34歳だという。人種別に見ると、回答者の37.9%は白人で、29.5%は黒人、あるいはアフリカ系アメリカ人、そして18.2%はアメリカに移民してきたアーティストだ。また、42.6%はLGBT、クィア、クエスチョニング、インターセックス、アセクシュアル、あるいはアロマンティックであることが判明した。

回答者は、14の選択肢から自身が専門としている芸術分野を選んでいるが、3225人(24.1%)が視覚芸術を専門としており、21.9%が音楽、8.5%が演劇に携わっていると回答している。

視覚芸術アーティストに絞って見てみると、調査結果をUS版ARTnewsが分析するに、その33%はソロで活動しており、4%は定期的に他のアーティストとコラボレーションを行っていると考えられる。また、その78%は自身が制作する作品の質を上げるために教育を受けたり、キャリアを開発したりする上で、困難を経験したと回答し、49.7%は、自身の経済力では、作品制作に必要な材料、訓練、制作スペース、アシスタントの雇用がままならないと答えている(アーティスト全体では45.8%)。さらに、視覚芸術アーティストの多くが自身の経済状況を「悲惨」と回答しており、その42%は「不安定な生活を送っている」と表現。他分野のアーティストの40.1%を上回った。また、彼らの56%が2021年の世帯収入は2万5000ドルを下回ったと回答し、60%近くが、クレジットカードを使わなければ予期せぬ支出が発生した際のアメリカの基準とされている400ドル(約6万4000円)を用意できないと答えた。こうした結果について、CRNYで社会システム変革のディレクターを務めるジェイミー・ハンドは次のように語る

「アーティストたちが苦境に立たされているのは直感的にわかりますし、アート業界で働く人間なら誰でも知っていることだと思います。とはいえ、こうした結果が数字によって可視化されたことで、アーティストの就労機会の確保に関する私たちの啓蒙活動や方針の方向性を決める際に確実に役立つことでしょう」

ハンドはまた、緊急用の資金を用意できていないアーティストの割合に関して、特に印象的な発見があったという。予期せぬ出費に対応できる貯金がないと回答したのは全体の62%だったが、「それを黒人アーティストに絞ると、割合は78%まで上昇する」と彼女は語る。

CRNYは啓蒙活動に取り組んでいる非営利団体、あるいは資金援助を受けているアーティストに対して、今回の調査で集まったデータをさらに分析するために、支援金の寄付を呼びかけており、最高で一度に1万5000ドル(約242万円)まで寄付することが可能だという。今回の調査結果と調査に使われた質問表は、米国立芸術基金が設立したデータアーカイブサイト、「National Archive of Data on Arts and Culture(NADAC)」からダウンロードできる。(翻訳:編集部)

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