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  • 2022.06.02

前澤友作氏のバスキア7500万ドルで売却、草間彌生ら女性や黒人アーティストの記録更新相次ぐ~5月のオークション記事まとめ

ARTnewsが5月に報じたオークション情報をまとめてお届けする。5月、実業家の前澤友作氏が手放したジャン=ミシェル・バスキアはフィリップスで、7500万ドルで売却された。パブロ・ピカソやクロード・モネ、マーク・ロスコなど大御所の作品が手堅く売れた一方、これまで過小評価されてきた女性や黒人アーティストの発見・見直しが進んだ。1050万ドルで落札された草間彌生を始め、シモーヌ・リー、クリスティーナ・クアレスら女性作家が、自身のオークション記録を更新した。女性シュルレアリストのレオノーラ・キャリントン、黒人男性のアーニー・バーンズ、若手女性のアンナ・ウェイアントらは、低い見積もりをはるかに超える高額で落札された。

Jean-Michel Basquiat's Devil 1982. COURTESY PHILLIPS

前澤友作氏のバスキア、7500万ドルで売却、オークション会社の実績を塗り替え

アートコレクターとして知られる実業家の前澤友作氏が所有していたジャン=ミシェル・バスキアの絵画《無題 (悪魔)》(1982年)が5月18日、フィリップスでオークションに掛けられた。前澤氏がクリスティーズで5730万ドルで購入してからわずか6年、作品は7500万ドル(最終価格8500万ドル)で売却された。ダウの下落など金融市場が不安定化する中で、バスキアの出した「48%のリターン」は、有形資産への逃避(美術市場の活性化)を示唆するかもしれないと、フィリップス副社長は話す。また、このバスキアの販売額は、同社の販売実績を塗り替える過去最高額となった(これまでの記録は、2010年にウォーホルで出した6300万ドル)。国際的なオークション会社として、同社がサザビーズやクリスティーズに比肩したことを意味する。

また、同日のオークションでは、草間彌生も過去最高額を達成した。1959年のモノクロのカンバス作品《Untitled(Nets)》が1050万ドルで落札された。最低見積価格500万ドルの2倍以上だった。

※この記事は、米国版ARTnewsに2022年5月18日に掲載されました。元記事はこちら

Mark Rothko, Untitled,1960. COURTESY SOTHEBY'S

マックロー夫妻コレクション、計9億2000万ドル超で単一所有者の販売記録を更新

ニューヨークの不動産王、マックロー夫妻の離婚に伴うコレクション売却の第2回は5月16日、NYのサザビーズで開かれ、総額2億4610万ドルを売り上げた。これで、マックロー・コレクションの売上高は計9億2220万ドルに達し、オークションに掛かった単一所有者による販売記録(2018年にクリスティーズでロックフェラー・コレクションが記録した計5億ドル)を上回った。

マーク・ロスコの《無題》(1960年)は4800万ドルで落札された。ゲルハルト・リヒターの記念碑的な作品《Seestück(海景)》(1975年)はプレミア付きで3020万ドルと、落札予想価格2600万ドルを上回った。アンディ・ウォーホルの《ヴァニタス:頭蓋骨と自画像》(1962年)は1600万ドルと、予想落札価格の1500万ドルをわずかに上回っただけだった。ウィレム・デ・クーニングの抽象画(1961年)は1770万ドル(予想価格700万ドルの2倍以上)、サイ・トゥオンブリーの作品(1968年)は1530万ドルで売れた。

Andy Warhol, Hammer and Sickle, 1976. COURTESY SOTHEBY'S

ウォーホルの《鎌と槌》(1976年)は、予想価格400万ドルに対して640万ドルで落札された。アルベルト・ジャコメッティが弟ディエゴをモデルにしたブロンズ彫刻(1968年)は890万ドル(落札予想700万ドル)で販売された。

※この記事は、米国版ARTnewsに2022年5月16日に掲載されました。元記事はこちら

Pablo Picasso, Femme nue couchée, 1932. COURTESY CHRISTIE'S

ピカソとセザンヌの2点で1億ドル以上売り上げ、女性作家もオークション記録を更新

サザビーズで5月16日夜、印象派と現代アートの60点が販売され、計4億850万ドルを売り上げた。この夜の最高額を記録したのは、マリー・テレーズ・ウォルターが休む様子を描いたパブロ・ピカソの《Femme nue couchée》(1932年)で、6750万ドルと、6000万ドルの見積もりを上回った。ポール・セザンヌの風景画(1895年頃)も、4170万ドル(落札予想価格3000万ドル)で売れた。クロード・モネの風景画(1913年)は2000万ドル(最終価格2330万ドル)と、価格は伸びなかった。アルベルト・ジャコメッティのブロンズ彫刻は最終価格1750万ドルと、落札予想800万ドルの約2倍に達した。

Leonora Carrington, The Garden of Paracelsus, 1957. SOTHEBY'S

一方で、歴史的に過小評価されてきた作家が、オークションで「再発見」されている。女性のシュルレアリスト、レオノーラ・キャリントンの絵画(1957年)はこの日、330万ドルで販売された。落札予想価格150万ドルの倍以上で、これまでの彼女のオークション記録240万ドルを塗り替えた。キャリントンは、今年のヴェネチア・ビエンナーレのテーマに影響を与えた一人とされている。

※この記事は、米国版ARTnewsに2022年5月17日に掲載されました。元記事はこちら

Simone Leigh, Birmingham, 2012. COURTESY SOTHEBY'S

女性作家が躍進、サザビーズ「今」セール

サザビーズは5月19日、現代美術のオークションを連続して開催、計2億8340万ドルを売り上げた。フランシス・ベーコンのような定評のある作家だけでなく、若い作家や女性作家を取り上げる「ザ・ナウ(今)」というセールスを主催した。女性作家の躍進が目立った。

注目のロット番号1は先頃、27歳の若さでガゴシアン・ギャラリーに移籍し、ディーラーのラリー・ガゴシアンとの恋愛が取り沙汰されているアンナ・ウェイアント。良くないうわさにもかかわらず、彼女の作品《falling woman(落ちる女)》(2021年)は最終価格162万ドルと、20万ドルの見積もりをはるかに超えて落札された。ヴェネチア・ビエンナーレに参加中のクリスティーナ・クアレスの絵画(2019年)は370万ドル(最終価格453万ドル)で落札された。同じくヴェネチアで米国館ディレクターを務めるシモーヌ・リーの、黄色い花で飾られた黒人女性の頭像《バーミンガム》(2012年)は、175万ドル(最終価格217万ドル)で落札、作家のオークション記録を塗り替えた。ジェニファー・パッカーの絵は最終価格235万ドル、エイブリー・シンガーの絵は同525万ドルで売られ、ともに作家のオークション記録となった。

※この記事は、米国版ARTnewsに2022年5月19日に掲載されました。元記事はこちら

Ernie Barnes, The Sugar Shack, 1976. CHRISTIE'S

アーニー・バーンズ、見積もりの80倍で落札。女性や黒人アーティストが躍進 アン・バス・コレクション競売

クリスティーズは5月12日、ニューヨークの慈善家で名士、故アン・バスのコレクションをオークションに掛け、8億3100万ドルを売り上げた。エドガー・ドガ(4100万ドル)、クロード・モネ(6600万ドル、5600万ドル)、マーク・ロスコ(5800万ドル、4300万ドル)の作品を含む12作品は、計3億6300万ドルで販売され、落札予想の2億5000万ドルを大きく上回った。

20世紀アートは4億6800万ドルをもたらした。ゴッホ(5190万ドル)、ピカソ(4860万ドル)の他、これまで過小評価されてきた女性アーティストや黒人アーティストの作品が脚光を浴びた。特にアーニー・バーンズの《シュガーシャック》(1976年)は、マーヴィン・ゲイのアルバムのジャケットに使われたもの。15万ドルという低い見積もりの80倍、1300万ドルで落札された(最終価格1530万ドル)。

※この記事は、米国版ARTnewsに2022年5月12日に掲載されました。元記事はこちら

Ernie Barnes, Cool Quarterback, 1991. COURTESY THE ESTATE OF ERNIE BARNES, ANDREW KREPS GALLERY, AND ORTUZAR PROJECTS

オークションで注目されたバーンズ、遺族がギャラリーと代理店契約

クリスティーズの5月12日のオークションで、見積もりの80倍で落札された故アーニー・バーンズが、ニューヨークのギャラリーと代理契約を結んだ。同じくクリスティーズの翌日のセールでも、別のバーンズ作品は234万ドルで売られ、10万ドルの見積もりの20倍以上をたたき出した。NFLチームのオフェンシブラインマンとしてプレーした後、アートを描き始めたバーンズは2009年に他界した。

※この記事は、米国版ARTnewsに2022年5月19日に掲載されました。元記事はこちら

Adrian Ghenie, Pie Fight Interior 12, 2014. CHRISTIE'S

奈良美智、6年前の5倍以上で落札、クリスティーズ香港

クリスティーズ香港は5月26日、合計14億香港ドル(1億8400万ドル)を売り上げた。最低見積もりの12億香港ドル(1億5000万ドル)をわずかに上回っただけだったが、ロッカクアヤコを含むアーティスト11人は売り上げ記録を更新した。この日の最高額はピカソの2200万ドル(落札予想価格1900万ドル)。だが、ピカソの世界的な記録とはかけ離れていた。奈良美智の作品(2014年)は、前回オークションに登場した2016年時の230万ドルの5倍以上に当たる1240万ドルで売却された。また、エイドリアン・ゲニーのシリーズ最大の作品《Pie Fight Interior 12》(2014年)は、8100万香港ドル(1030万ドル)で売却され、6800万香港ドル(880万ドル)の見積もりを上回った。

※この記事は、米国版ARTnewsに2022年5月27日に掲載されました。元記事はこちら

Christie's New York sale room, May 10. COURTESY CHRISTIE'S

クラプトン旧所有のリヒター、予想価格を下回る クリスティーズ、1億300万ドルと今一つの結果

クリスティーズの21世紀美術のセールは5月10日、29ロットで合計1億300万ドルを売り上げた。見積もり上限をやや下回り、前年同期の約半分という結果に終わった。目玉になるはずだった、ジャン=ミシェル・バスキアの、木製の三連祭壇画「若き遺棄者としての芸術家の肖像」(1982年)など2点(売り上げ見込み3000万ドル)が販売開始前に撤回されていた。また、かつてエリック・クラプトンが所有していたゲルハルト・リヒターの赤、緑、黄色の抽象画(1994年まで)は、2012年にオークションで3420万ドルで販売されたもの。今回が再販売だったが、3300万ドルと、売却予想価格3500万ドルを下回った。

※この記事は、米国版ARTnewsに2022年5月10日に掲載されました。元記事はこちら

Roman carved marble bust, late 1st century BCE. COURTESY THE BAVARIAN ADMINISTRATION OF STATE-OWNED PALACES, GARDENS AND LAKES

リサイクルショップで35ドルで買った胸像、実は古代ローマの作品だった

テキサス州のビンテージショップのオーナー女性が2018年、大手リサイクル店グッドウィルで約34.99ドル(約4600円)の胸像を買った。だが、これが古いものに違いないと考えた女性は、専門家に調査を依頼。結果、紀元1世紀の古代ローマ時代のもので、バイエルン王ルードヴィヒ1世のコレクションの一つだったことが分かった。4年後に胸像はドイツに返還されるが、その前にサンアントニオ美術館で1年間、展示される予定だ。現在はテキサス博物館で2023年5月21日まで展示中だ。

※この記事は、米国版ARTnewsに2022年5月5日に掲載されました。元記事はこちら

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