草間彌生「無限の鏡の間」シリーズ、米国の美術館が共同購入した近作とは
ワシントンD.C.のハーシュホーン博物館と彫刻の庭、およびニューヨーク州バッファローのオルブライト=ノックス美術館が、草間彌生の《Infinity Mirrored Room—My Heart Is Dancing into the Universe(無限の鏡の間—私の心は宇宙へと踊り出す)》(2018)を共同購入した。同作品は、草間の「無限の鏡の間」シリーズのうち最も新しいものの一つ。2022年にハーシュホーン博物館で、23年にオルブライト=ノックス美術館で公開される予定だ。
同シリーズの他の作品同様、《Infinity Mirrored Room-My Heart Is Dancing into the Universe》は没入型のインスタレーションだ。鑑賞者は展示室に入ると、そこにつり下げられたカラフルな紙の提灯が鏡によって無限に増殖した空間に取り囲まれる。提灯は黒を基調としていて、草間作品の特徴である水玉模様が青、赤、紫、オレンジ、黄色で浮かび上がる。
オルブライト=ノックス美術館のヤンネ・シレン館長は声明の中で、草間を「先見性のある開拓者」だと評し、こう続ける。「この部屋には変革的な力がある。色を動的に使い、鑑賞行為に揺さぶりをかけるところは、草間が長年続けてきた仕事を象徴するものだ。草間は鑑賞者に、作品を見ている自分自身を見つめるよう促している」
草間が、人気シリーズ「無限の鏡の間」を作り始めたのは1965年のこと。トレードマークである赤い水玉模様をプリントした白い布に詰め物をした細長い枕状のものを、鏡張りの部屋に並べた《無限の鏡の間—ファルスの原野》が最初の作品だった。このアイコニックな作品は、草間による他の三つの作品とともにハーシュホーン博物館に収蔵されている。その後、草間は同様の作品を20点ほど制作。今や世界中の人々を魅了する「無限の鏡の間」シリーズは、大勢の観客を呼び寄せ、展示には長蛇の列ができる。
草間作品は何十年もの間、世界的にはさほど有名ではなかった。しかし、いくつかの大規模な展覧会をきっかけにインスタグラムで拡散され、「無限の鏡の間」シリーズは大人気作品となった。中でも、2017年にハーシュホーン博物館を皮切りに行われた巡回展「Yayoi Kusama: Infinity Mirrors(草間彌生:無限の鏡)」は、6つの会場で合計120万人もの来場者を集めている。
《Infinity Mirrored Room-My Heart Is Dancing into the Universe》は、企画展「One with Eternity: Yayoi Kusama in the Hirshhorn Collection(無限を秘めたもの:ハーシュホーン博物館の草間彌生)」の一部としてハーシュホーン博物館でお披露目される。同館のアシスタント・キュレーター、ベッツィ・ジョンソン氏が企画した本展は、2022年開催予定。
一方のオルブライト=ノックス美術館は、本館改装工事のため閉館中で、2022年中にBuffalo AKG Art Museum(バッファローAKG美術館)として再オープンする。共同購入した草間作品は23年に公開を予定。また、三つのエディションが存在するこの作品の別バージョンは、19年にアーカンソー州のCrystal Bridges Museum of American Art(クリスタルブリッジズ・アメリカンアート美術館)が取得し、同美術館で常設展示されている。
ハーシュホーン博物館のメリッサ・チウ館長は声明の中で次のように述べている。「今度の展覧会では、草間の初期の絵画、彫刻、画期的な没入型作品の文脈の中に、この新作を位置づけています。オルブライト=ノックス美術館との提携により、この作品を展示できることに感謝の意を表します」(翻訳:野澤朋代)
※本記事は、米国版ARTnewsに2022年1月20日に掲載されました。元記事はこちら。