ロシア当局が検閲か。展示作品が「ナチス的」であるとしてサンクトペテルブルクの現代美術館を提訴
ロシア・サンクトペテルブルクにある現代美術館、エラルタ美術館は、「ナチスを象徴する言葉 」が書かれている作品を展示したとして、ロシア当局に提訴された。
ロシア最大の現代美術の個人コレクションを扱うサンクトペテルブルクのエラルタ美術館が「ナチスを象徴する言葉 」とともに絵画を展示したとして、ロシア当局は7月12日、サンクトペテルブルク西部のヴァシレフスキー地方裁判所に提訴した。
地方裁判所の報道責任者ダリア・レベデワによると、問題視された作品はベラルーシの画家セルゲイ・グリネヴィチが描いた《Festival》だ。2016年にエラルタのパーマネント・コレクションに加わった同作には、スーツ姿の警備員3人組の背後に、伝統的なベラルーシの衣装を着たダンサーたちが描かれている。
グリネヴィチは2020年、同館に展示されている《Festival》の下に、ベラルーシ語で「Zyvie Bielarus! (ベラルーシ万歳!)」と書き加えた。このフレーズは、2020年のベラルーシ大統領選でプーチン大統領の盟友アレクサンドル・ルカシェンコが再選したことを機に起こった、ベラルーシ反政府デモのスローガンで、当時、広く唱和された。この反対運動に対してルカシェンコは残忍な弾圧を行い、大勢の人々が殴打され、投獄された。
前出のレベデワによれば、ロシア当局はこのフレーズを「ナチス的」と判断したといい、「専門家たちは、この言葉は第2次世界大戦中のナチ党の挨拶でもあり、ナチスに協力した第13ベラルーシ警察大隊とヴァッフェンSSの第30擲弾兵(歩兵)師団のスローガンでもあったと結論づけた」と説明する。
セルゲイ・グリネビッチは以前より、ロシア当局の検閲を非難してきた。エラルタ美術館はこの件に関して公にはまだコメントしていない。審問はまだ予定されていないが、有罪が確定した場合、最高567ドル(約8万円)の罰金が課されることに加え、警察に絵画を引き渡さなければならなくなる可能性もある。(翻訳:編集部)
from ARTnews