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2026年ホイットニー・ビエンナーレのキュレーターが決定。新大統領率いるアメリカはアートにどう映るか

2026年のホイットニー・ビエンナーレを率いるキュレーター2人が発表された。同ビエンナーレは1932年に創設された歴史ある芸術祭で、常にアメリカ現代美術の最前線を捉え続けてきたことで定評がある。

2026年ホイットニー・ビエンナーレのキュレーターに決定したドリュー・ソーヤー(左)とマルセラ・ゲレロ。Photo: Bryan Derballa

2026年に開催される全米屈指の芸術祭、第82回ホイットニー・ビエンナーレのキュレーターがマルセラ・ゲレロとドリュー・ソーヤーに決定した。2人は、同ビエンナーレを主催するニューヨークホイットニー美術館のキュレーターチームに所属している。

ゲレロは、同美術館初のラテンアメリカ系アートに特化したキュレーター。2017年に大型ハリケーン「マリア」で甚大な被害に見舞われたプエルトリコの美術を紹介する展覧会や、メキシコの壁画がアメリカ美術に与えた影響を考察する展覧会など、同美術館でも評価の高い企画に携わってきた。

現在は、11月1日から始まる「Shifting Landscapes(変化する風景)」展のキュレーターチームの一員として準備を進めている。同展はホイットニーの所蔵品によるコレクション展で、政治や社会、地球環境など、アーティストを取り巻く世界の変化が彼らの風景表現にどう反映されているのかを探求するもの。

一方、写真部門のキュレーターとして昨年ホイットニー美術館に加わったソーヤーは、今月24日に開幕するマーク・アーミホ・マックナイトの個展を担当。ホイットニーに入る前はブルックリン美術館でキュレーターを務め、ZINE(ジン)カルチャー(*1)に関する大規模な展覧会や、写真家の故ジミー・デ・サナの回顧展などを企画した。


*1 ZINEとは、個人や有志が自由なテーマで制作・発行する非営利の自主出版物のこと。

2026年のビエンナーレでゲレロとソーヤーは、アメリカのアートシーンの「今」を提示することになる。これまで、時代時代のアメリカの姿を鮮烈に映し出してきた同ビエンナーレは、大きな関心を集めるとともに、しばしば物議を醸し、評論家やアーティストたちの間に賛否両論を巻き起こしている。

クリッシー・アイルズとメグ・オンリがキュレーターを務めた今年のビエンナーレ(8月11日まで)も、やはり意見が分かれた。US版ARTnewsやArt in America誌など一部のメディアが高く評価する一方、無難すぎると批判したメディアもある。

今回のキュレーター発表にあたり、ホイットニー美術館のスコット・ロスコフ館長は声明でこう述べている。

「2024年のビエンナーレが間もなく閉幕を迎える今、2026年の開催に向け、ホイットニー美術館のキュレーターで編成される新たなチームにバトンを渡せることを嬉しく思います。ホイットニー・ビエンナーレは、その時々を代表する才能豊かな作家を紹介する場であるとともに、マルセラやドリューのような先見性のあるキュレーターが力を発揮できるプラットフォームでもあるのです」(翻訳:石井佳子)

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