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グッゲンハイム美術館、韓国LGグループと共同でテクノロジー・アートへの大規模投資を発表

6月1日、グッゲンハイム美術館(ニューヨーク)が、韓国のLGグループ企業とのパートナーシップによる「LGグッゲンハイム・アート&テクノロジー・イニシアチブ」を発表。同館は、急成長するテクノロジー・アート分野への取り組みを進めている。

ヤング・コレクターズ・カウンシル(YCC)のパーティが開催されたグッゲンハイム美術館 Courtesy The Guggenheim Museum

LGグッゲンハイム・アート&テクノロジー・イニシアチブでは、アーティストに対する年間賞プログラムや、仮想・拡張現実、AI、NFTなどを用いたアート専門のキュレーター職が新たに設けられる。

新設されるLGグッゲンハイム賞はグッゲンハイム財団の運営で、「テクノロジーを駆使したアートで画期的な功績をあげた」アーティストを毎年1名表彰するもの。アーティストやキュレーター、美術館館長などの専門家からなる国際的な委員会が審査を行い、受賞者には10万ドルの賞金が授与される。第1回目の受賞者は、来春のヤング・コレクターズ・カウンシル・パーティ(*1)で発表される予定だ。


*1 グッゲンハイム美術館のヤング・コレクターズ・カウンシル会員を対象に、毎年美術館内で行われるパーティー。

また、新たに任命されたLGエレクトロニクスのアシスタントキュレーターは、展示、研究、教育を通じて、グッゲンハイムとデジタル/テクノロジー分野で活躍するアーティストの関係を深めることに重点を置くと述べた。

グッゲンハイムの副館長で主任キュレーターのナオミ・ベックウィズは、声明で次のように説明する。「LGグッゲンハイム・イニシアチブは、学術研究や市民参加を促進し、テクノロジーがどのように社会を形成し、逆に社会によってテクノロジーがどう形成されるかを我われに示してくれるような先見性のあるアーティストを支援していく」

同イニシアチブは、グッゲンハイムの企画展を革新的なものにしていくだろう。2021年、同館は「Re/Projections: Video, Film, and Performance for the Rotunda(再/投影:円形建築のためのビデオ、フィルム、パフォーマンス)」というタイトルのシリーズ展示を実施。螺旋状回廊の中心にある吹き抜けで、所蔵品の映像や3人のアーティストによる作品を上映した。シリーズの最後を飾ったのは、天井から吊るされた高さ約26メートルの巨大な紗幕(しゃまく)に投影されたウー・ツァンの作品《Anthem(賛歌)》だ。

ニューヨークの一部の美術館では、すでにテクノロジー・アートへの長期的な投資を始めている。たとえば、ホイットニー美術館では、2000年からクリスティアーネ・パウルがデジタル・アートの補佐キュレーターとして活躍。彼女が担当し、18年から19年にかけて開催された企画展、「Programmed: Rules, Codes, and Choreographies in Art, 1965–2018(プログラム化:アートのルール、コード、そしてコレオグラフィー、1965-2018)」は、テクノロジー・アートの歴史を辿り、その未来を展望するものだった。

また、ニュー・ミュージアムでは、2014年にアート、テクノロジー、デザインのための支援プログラムを立ち上げている。グッゲンハイムは今回発表したイニシアチブで、こうした動きに追いつくことができるかもしれない。

とはいえ、NFTやメタバースなど、まだ黎明期にあるテクノロジーがどんなアート体験を生み出していくのか、どの美術館もまだ試行錯誤の段階にある。

グッゲンハイムは、LGと組んで進めるイニシアチブについて、「我われの時代のアートを収集し、保存し、解釈するというミッションに必要不可欠なサポートを提供する」と述べている。(翻訳:平林まき)

※本記事は、米国版ARTnewsに2022年6月2日に掲載されました。元記事はこちら

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