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英サマセット・ハウスの火災で建物の一部が消失。ゴッホ作品などを所蔵する美術館には被害及ばず

ロンドンのサマセット・ハウスで8月17日に火災が発生し、西館の屋根をはじめとする建物の一部が焼失した。しかし、100人以上のロンドン消防隊よって火は同日の夜に消し止められ、死傷者はおらず、収蔵作品にも損害は及ばなかったようだ。

テムズ川沿いにあるサマーセット・ハウスの屋根から煙が上がった。Photo: AFP via Getty Images

8月17日(イギリス時間)、イギリス・ロンドン中心部にある歴史的建造物サマセット・ハウスで火災が発生した。出火原因はわかっていない。チューダー朝時代に建てられた宮殿の跡地に建設された複合施設には、コートールド美術研究所をはじめとする芸術・教育機関が入っている。同施設の営業再開の見通しは、今のところ立っていない。

西館の屋根から出火した今回の火災は、125人の消防隊によって同日の晩に消火され、ゴッホモディリアーニといった印象派の作品群が収蔵されているコートールド美術館内には一切の被害は及んでいないとサマセット・ハウスは声明を発表。翌18日から同施設は美術館の営業を再開している。

今回の火災によって3階が一部焼失したほか、西館の屋根が部分的に燃えたが、死傷者は出ていないという。だが、火災当日に行われる予定だった南アジアの創造性に焦点を当てたイベント「Daytimers x RepresentAsian」はキャンセルとなり、中庭で開催が予定されていたブレイクダンスのイベント「London Battle」も翌日に中止が発表された。

サマセット・ハウスは1547年にサマセット公爵によって建てられたが、権力争いに敗れた彼は、宮殿の完成を待たずに1552年に処刑されてしまった。同施設のウェブサイトによれば、公爵の死後、エリザベス1世が1558年に女王に即位するまでここに居住していたという。その後、この宮殿は所有者が何度か変わったのちに1775年に取り壊され、1801年に現在のサマセット・ハウスが新たに建てられた。近年では、スケートリンクやライブ演奏、そしてロンドン・ファッション・ウィークの会場としても使われている。

BBCニュースの取材に応じたロンドン消防隊の副所長を務めるキーリー・フォスターは「建物の老朽化と複雑な設計によって、今回の消火活動は難儀を極めた」と語っており、真夏の暑さのなか火を消し止めた消防隊員たちをねぎらった。また、政府は「損害の状況を把握する」ためにサマセット・ハウスと連携を取っていると語り、こう続ける。

「サマセット・ハウスで発生した火災の被害に見舞われた方たちにはお悔やみ申し上げます。この歴史的建造物には、ロンドンの素晴らしいギャラリーやクリエイティブスペースがあります。死傷者が出なかったことを大変うれしく思うと同時に、サマセット・ハウスが一刻も早く一般に向けて再公開できることを願っています」(翻訳:編集部)

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