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環境問題に取り組む女性アーティストに総額4500万円の助成金。900超の応募者の中から19人が受賞

2022年に発足した環境問題を扱うアートプロジェクトを支援する助成金プログラム「Anonymous Was A Woman Environmental Art Grants」の第3回受賞者が発表された。

ヴィクトリア・イドンジット・ウドンディアン《ABOUT 1000》(2013)Photo: Courtesy the artist

1996年以来、女性アーティストの活動を支えてきた非営利団体アノニマス・ワズ・ア・ウーマン(Anonymous Was A Woman=AWAW)がニューヨーク芸術財団(New York Foundation for the Arts=NYFA)と2022年に設立した、環境問題を扱うアートプロジェクトを支援する助成金プログラム、「Anonymous Was A Woman Environmental Art Grants(AWAW EAG)」の第3回受賞者が発表された。

今回その対象となったアメリカおよびアメリカ領で活動する19人の女性アーティストたちには、最高2万ドル(約290万円)、総額30万8000ドル(約4500万円)が授与され、2025年8月までにガーナ、コロンビア、アメリカ合衆国(プエルトリコを含む)で制作を行う計画だ。

19人の受賞者のうち、ダラ・フリードマン(Dara Friedman)を含む数人が先住民族をテーマにしており、また、ローレン・ウォーターズ(Loren Waters)とレベッカ・ジム(Rebecca Jim)の《ᏗᎯ IJĴᎯ(Meet Me at the Creek)》のように、資源採掘と環境破壊のもつれに焦点を当てたプロジェクトもある。ほかにも、ヴィクトリア・イドンジット・ウドンディアン(Victoria-Idongesit Udondian)のように世界の二酸化炭素排出量の10%を占める繊維汚染、とりわけアフリカにおける繊維廃棄物の影響に言及した作家もいる。

過去のAWAW EAG受賞作家は、荒廃した公園を地元コミュニティとともに蘇らせるプロジェクト《ウォーター・ベアラーズ》を展開したサラ・カヴェッジや、一般の参加者とともに廃棄物を出さずジェンダー・ニュートラルなアパレル生産のあり方を探求する《Flux Bene 10k Garment Project》を行ったレベッカ・ジョイ、Bosque Abierto / Open Forest》と題したプロジェクトを通じて参加者と共に3日間の没入型キャンプを行いながら、自然と文化遺産の相互関係を探求したソル・アラメンディなど。

AWAW創設者のスーザン・ウンターバーグはアート・ニュースペーパーの取材に対し、「私たちはこれまでアート業界における根強いジェンダーギャップに取り組んできました。そんなAWAWの活動に加え、今年で3年目となるAWAW EAGを通じて気候危機に取り組む活動にも資金援助し、さらなる影響力拡大を目指します」と語っている。また、今年のAWAW EAGに900を超える応募があったことを振り返り、「この大きな反響は、アーティストたちの現在の実用的かつ実存的な危機に立ち向かう意欲の高さを示しています。そして、環境問題を扱うアートを鑑賞することで、観客の主体性が活性化されることが証明されています」と述べている。

さらにウンターバーグは、アートを通じた気候危機への対応にはより多くの支援が必要であるとして、「ロサンゼルス現代美術館(MOCA)が今年新設した『エリック・アンド・ウェンディ・シュミット環境芸術賞』のように、世界の慈善家たちには、アートと環境問題というテーマにより一層コミットしてほしい」と呼びかけている。

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