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工芸とアートの交差点を可視化せよ!北陸が舞台「GO FOR KOGEI 2024」の多彩な見どころ

北陸各地を舞台に工芸とアートの魅力を発信する「GO FOR KOGEI 2024」が9月14日から10月20日まで開催される。今年は37組(15人+4組)のアーティストが参加し、伝統的な町並みの中で様々な作品展示やイベントが行われる。その多彩な見どころを紹介する。

〈出展作品〉 安田泰三 《モザイク文様鉢》 2022年 個人蔵

北陸を舞台に今日の多様な工芸と隣接するアートを紹介する「GO FOR KOGEI」は2020年に初開催された。5回目となる今年は「くらしと工芸、アートにおける哲学的なもの」をテーマに据え、アルチザンやクラフトマン、デザイナー、アーティストなど、これまで以上に多様な背景を持つ37作家(15人+4組)が参加する。

GO FOR KOGEIの魅力は、なんと言っても北陸の風情ある景色と作品の両方を楽しめること。今年は富山市の岩瀬エリアに加え、金沢市の東山エリアの2カ所で開催される。今回の会場について、総合監修を務める秋元雄史は、「美術館のようなニュートラルな場所とは異なり、伝統的な町並みが残る両エリアでは、昔ながらの暮らしが営まれています。そこに今日的な工芸、アートを差し込むことで、普段とは異なるまちの姿を見せることができるでしょう」と語る。

それでは各会場ごとの見どころを紹介しよう。

【富山・岩瀬エリア】北前船で栄えた港町を舞台に現代アートと工芸のダイナミックな競演

岩瀬エリアにある葉山有樹 《双竜》 2023年 Photo: Watanabe Osamu

富山駅から車で北へ約15分の距離にある岩瀬エリアは、江戸後期から明治にかけて北前船の交易で栄えた地域で、当時の建物が残る街並みは観光スポットとして知られている。富山港展望台ではニューヨークを拠点に活動する松山智一とタイ出身の若手作家のサリーナー・サッタポン、Aka BarとAo Barの2カ所では漆と化粧の親和性をテーマに制作する五月女晴佳など、エリアのさまざまな場所で工芸と現代アートのサイトスペシフィックな作品展示を行い、今日における工芸の広がりを紹介する。

〈出展作品〉 磯谷博史 《活性 05》《活性 06》 2023年 個人蔵
〈出展作品〉 松山智一 《ダブル・ジョバディー!》 2020年 K.T.蔵 Courtesy of Matsuyama Studio

また、桝田酒造店 沙石では、書家の柿沼康二が手掛けたGO FOR KOGEIのロゴ入りのお猪口で100種に渡る利き酒体験が出来る。

ほか展示作家は石渡結、磯谷博史、伊能一三、岩崎努、岩村遠、柿沼康二、澤田健勝、釋永岳、舘鼻則孝、外山和洋、安田泰三。


【金沢・東山エリア】茶屋街の雅な歴史と現代の工芸を愉しむ

ひがし茶屋街(石川県金沢市) ©金沢市

金沢駅から車で10分。重要伝統的建造物群保存地区として、かつて茶屋街としてにぎわった町並みが保存された「ひがし茶屋街」を擁する東山エリアは、多くの職人が工房を構えた場所でもある。現在でも昔ながらの住宅街の中に隠れ家的なカフェやギャラリーが点在し、工芸と暮らしが密接に結びついた姿を垣間見ることができる。その中にあるスパイス店、INSPICE kanazawaでは、八木隆裕が当主を務める手作り茶筒の老舗、開化堂とコラボし、スパイスの販売サンプルを開化堂の気密性が高い茶筒に入れテイスティングする。

〈出展作品〉 竹俣勇壱 展示風景(tayo・石川、2024年)
〈参考〉 宴KAI プロジェクトー淋汗草事ー Photo: Yoshikawa Shinjiro

中でも注目は、建築家の三浦史朗と工芸の職人が過去に手がけたプロダクトを保管する「KAI 離(かい はなれ)」の一般公開。そこでは、室町時代中期に流行した一族や仲間が集まって風呂に入り汗を流し、茶を飲んで酒宴を行う「淋汗茶湯(りんかんちゃのゆ)」から着想された宴席「淋汗草事(りんかんそうじ)」が行われる。風呂や食事の場を設ける「松」、茶菓子を楽しむ「竹」、お茶をふるまう「草」の3段階で来場者をもてなすという内容だ。「松」「竹」「草」はそれぞれ日程が異なり、予約が必要な回もあるので公式サイトで確認してほしい。

ほか展示作家は赤木明登×大谷桃子、川合優×塚本美樹、竹俣勇壱×鬼木孝一郎。

GO FOR KOGEI 2024 
会期:9月14日(土)〜10月20日(日)
場所:富山県富山市(岩瀬エリア)、石川県金沢市(東山エリア)
時間:10:00〜16:30(入場は30分前まで)
休館日:会期中無休(一部定休日のある会場あり)

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