ドイツ銀行がロンドン新社屋に現代アート100点を展示。「会話を刺激し、新たな発見のきっかけに」
全世界に拠点を構えるドイツのメガバンク、ドイツ銀行は、このほど新たなロンドン本部のビルに4つのサイトスペシフィックなコミッションワークと、100人以上のアーティストの作品を展示したことを発表した。
ドイツ・フランクフルトを本拠地とするメガバンク、ドイツ銀行は、1979年から現代アート作品をコレクションしており、現在は5万点を超える。それらの一部は本社ビルをはじめ、世界各国の支店オフィスに展示され、社員とアートの繋がりを図っている。また、将来有望なアーティストを支援するために「アーティスト・オブ・ザ・イヤー」を毎年開催。そしてロンドン、ソウル、ニューヨーク、ロサンゼルスで開催されるアートフェア、フリーズのグローバル・リード・パートナーを21年に渡って務めている。
そんなドイツ銀行は、イギリス・ロンドンの金融街シティに建てた新ロンドン本部ビル(21ムーアフィールズ)に4つのサイトスペシフィックなコミッション作品を設置したことを発表した。手掛けたアーティストは、イギリス出身のシメオン・バークレイ、クレア・フーパー、レネ・マティッチ、そしてアイルランドのジェイク・アーヴァイン。
ダブリン生まれのジェイク・アーヴァインは階段に展示するために、蝶の一種であるオオカバマダラをモチーフにしたダイナミックなインスタレーションを制作した。この作品についてアーヴァインは、「毎年、オオカバマダラはカナダから4000キロを旅し、メキシコのミチョアカン州の山で冬を越します。この蝶の苦境と移住者の人間の苦境を対比させました」と話す。
レネ・マティッチは、現在進行中の写真シリーズ「存在しない国旗と存在する身体」から20点を選び、3フロアにわたって展示した。同シリーズは公営団地、海沿いの町、政治的な落書きの写真が、アーティストの友人や家族のポートレートの中に配置され、多様性と不安定さを併せ持つ都市コミュニティをロマンチックに表現している。
シメオン・バークレイの作品は、コラージュとCGIレンダリングを組み合わせたもので、社内外で展開されている。作品の中には、職場によくあるウォータークーラーをモチーフにしたものもある。これらはドイツ銀行の長い歴史と多国籍企業としての構造を表現しており、個人と組織のイノベーションを推進するために不可欠な社会的・文化的ダイナミクスを示唆している。
また同ビルには、今年のヴェネチア・ビエンナーレのイギリス代表作家であるジョン・アコムフラの《Liminality Triptych》(2016)、ノエミー・グーダルの《Phoenix IV》(2021)のほか、ラナ・ベグム、ジェラルド・バーン、シェザド・ダウッド、シオバン・ハパスカ、ダミアン・ハースト、モナ・ハトゥムなど、同銀行のコレクションから27カ国100人以上のアーティストの作品が展示されている。その内訳について銀行は、「49%が女性、トランスジェンダー、またはノンバイナリーで、48%が有色人種である」と説明する。
ロンドン本部ビルのアート展示について、ドイツ銀行の芸術文化担当グローバル・ヘッドであるブリッタ・ファーバーはUS版ARTnewsの取材に次のように語った。
「ドイツ銀行のコレクションは設立以来、企業コレクションを誰もが鑑賞しやすいものにするという根本的な目的を持って常に進化し続けてきました。新しいロンドンオフィスでは私たちのコミッションやコレクションをアクセスしやすい場所に展示することで、アート作品が会話を刺激し、新たな発見のきっかけにしてもらいたいと考えています。従業員や顧客だけでなく、一般の人々も視覚を通してアーティストと交流し、彼らのストーリーテリングが今日の社会とどのように響き合うかを探求できることを願っています」