ARTnewsJAPAN

マウリッツハイス美術館にレンブラント作品を寄贈した遺族が全作品返還を要求。「約束が守られていなかった」

オランダマウリッツハイス美術館の元館長が寄贈したレンブラント・ファン・レイン(1606-1669)らの作品25点が「寄贈時の約束が守られていない」として、全て返還するよう遺族が求めている

マウリッツハイス美術館の展示室。2018年撮影。Photo: Wikimedia Commons

オランダマウリッツハイス美術館は、《テュルプ博士の解剖学講義》(1632)をはじめとするレンブラント・ファン・レインの豊富なコレクションで知られている。

ニューヨーク・タイムズ紙が報じたところによると、かつて同館の館長を務めた美術史家のアブラハム・ブレディウスが1946年に亡くなった際に、レンブラント《Two African Men》(1661)やその他の画家による25点の絵画をマウリッツハイス美術館に遺贈した。

しかし、ブレディウスの相続人は、寄贈にあたって彼が同館に提示した条件「修復や火災の場合を除き、(寄贈した)全ての美術品を常時展示すること」が遵守されていないとして、遺贈の無効と作品の即時返還を要求している。同館のHPによると、25点のうち20点が「非公開」になっていた。

レンブラント《Two African Men》(1661)Photo: Wikimedia Commons

マウリッツハイス美術館側は、ブレディウスが寄贈した一部の作品についての真贋に疑問を呈しているという。実際に、《Study of an Old Woman》《Tronie of an Old Man》の2点は、同館のHPでは「レンブラントの模倣」および「帰属不明」と表記されている。

アブラハム・ブレディウスは、オランダの巨匠たちに関する専門家として知られ、レンブラントやフェルメール作品の真贋を問うセンセーショナルな記事を執筆した。1889年にマウリッツハイスの館長に就任し、20年間の在任中に、同館を代表する作品であるフェルメール《真珠の耳飾りの少女》(1665年頃)など120点以上の主要な美術品を収集した。今回の訴訟を起こしたのは、同性愛者であったブレディウスの生涯のパートナーと言われる美術評論家、ジョセフ・クローニッヒの甥と姪であるオットーとソフィア・クローニッヒ夫妻だ。

 2021年にオットーとソフィアを含むブレディウスの相続人の何人かで美術館を訪れた際、5点の絵画しか見ることができなかった上に、一部は暗い階段に展示されていた。その様子にショックを受け、その後弁護士を呼んだという。オットーは、ニューヨーク・タイムズ紙のインタビューに「これはアブラハム・ブレディウスに対する侮辱です。彼が現状を知ったら、遺贈はしなかったでしょう」と語った。

寄贈作品が返還された場合についてソフィアは、 「売るつもりはありません」と話す。そして、「お金のためではないのです。 私たちにとって重要なのは、ブレディウスが遺した作品たちが誰にも見られないような奥の部屋に追いやられることではなく、注目されることなのです」と付け加えた。(翻訳:編集部)

from ARTnews 

あわせて読みたい