ナン・ゴールディンが「ウーマン・イン・モーション」フォトグラフィー・アワードを受賞。7月に新作発表

ケリングとアルル国際写真フェスティバルが、2025年「ウーマン・イン・モーション」フォトグラフィー・アワードをナン・ゴールディンに授与すると発表した。

2025年「ウーマン・イン・モーション」フォトグラフィー・アワードを受賞したナン・ゴールディン。

グローバル・ラグジュアリー・グループのケリングとアルル国際写真フェスティバルは、2025年「ウーマン・イン・モーション」フォトグラフィー・アワードをアメリカ人アーティストのナン・ゴールディンに授与すると発表。7月8日にフランス・アルルの古代劇場で授与式が行われるほか、ゴールディンの新作《Stendhal Syndrome(スタンダール症候群)》がサン・ブレーズ教会で展示される。

「ウーマン・イン・モーション」フォトグラフィー・アワードは、第一線で活躍する女性写真家のキャリアに敬意を表するもので、2019年の創設以来、スーザン・マイゼラス、サビーヌ・ヴァイス、リズ・ジョンソン・アルトゥール、バベット・マンゴルト、ロザンジェラ・レンノ、石内都といった写真史に名を残す写真家たちに授与されてきた。受賞した写真家の作品はアルル国際写真フェスティバルのコレクションに収蔵され、その対価が受賞者に支払われる。

ケリングは2015年にカンヌ国際映画祭において「ウーマン・イン・モーション」プログラムを発足。映画界における女性の地位向上を目指す取り組みとして始め、その後写真分野にまで活動を広げた。2024年からはアルル国際写真フェスティバルのメインパートナーとなり、支援を強化している。

ナン・ゴールディンは1953年にワシントンD.C.に生まれ、現在はニューヨークとパリを拠点に活動する写真家であり活動家だ。ゴールディンは極めてパーソナルな視点から撮影したポートレートにより、写真芸術に革命をもたらした人物として知られている。

1980年から1986年にかけて制作された代表作《The Ballad of Sexual Dependency》では、恋人同士の関係や支配的な力の複雑性を明らかにし、それまでないがしろにされてきた女性やコミュニティの声を代弁した。また、性的マイノリティや親密な友人たちの日常にレンズを向け、ジェンダーの固定観念を覆す作品群で世界的な評価を得ている。

その一方で、2017年にはアメリカで蔓延する麻薬性鎮痛薬オキシコンチン中毒の問題に取り組む団体「P.A.I.N(Prescription Addiction Intervention Now)」を立ち上げ、社会活動家としても注目されている。こうした活動を記録したドキュメンタリー映画『美と殺戮のすべて』(2024)は第87回アカデミー長編ドキュメンタリー賞を受賞した。

今回アルルで展示される新作《Syndrome de Stendhal(スタンダール症候群)》は、古典、ルネサンス、バロックの名作と彼女の友人や恋人のポートレートを並置したスライドショー作品。オウィディウスの『変身物語』から着想を得ており、友人や家族を神話の登場人物に見立てた構成となっている。サウンドウォーク・コレクティヴが手掛けたサウンドトラックにゴールディンの声がミックスされ、そこにミカ・レヴィの音楽が加わる。タイトルの「スタンダール症候群」とは、歴史的な建造物にある絵画や彫刻を見ると気分が悪くなる症状のことだ。

受賞についてゴールディンは、「このような賞をいただけて大変光栄です。私が敬愛し、尊敬する偉大な女性写真家たちと並び立つことができることを誇りに思います。アルルには長年にわたるつながりがあり、特に1980年代、駆け出し時代の私自身と作品に計り知れない影響を与えた場所です」とコメントした。

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