アート・バーゼルとUBSが最新のコレクター調査を発表。支出は少なく新進アーティストへの注目高まる
アート・バーゼルとUBSは10月24日、世界のアートコレクターに対する調査レポート「Global Collecting in 2024」を発表した。それによると、富裕層のアート作品への支出額は減少傾向にあるものの、新進アーティストへの注目が高まっていることが分かった。
アート・バーゼルとUBSは毎年、世界のアートコレクターに対する調査レポートを発行しており、その2024年版「Global Collecting in 2024」が10月24日に発表された。これは、2023年から2024年前半にかけて世界の主要14カ国の3600人以上の富裕層( high-net-worth=HNW)のアートコレクターを対象に行った調査をもとに、文化経済学者のクレア・マッキャンドルーが執筆している。
富裕層の平均支出額は減少するも中央値は安定傾向
同レポートによると、2023年の富裕層による美術品への平均支出額は前年の32%減の約36万3905ドル(約5500万円)に落ち込んでいることが分かった。特にこれは、現代アート市場の落ち込みが著しいというここ数カ月の報道を裏付けるものだ。その要因について、レポートは「高金利や国際的な緊張状態、貿易の断片化という背景が、買い手と売り手双方の感情に重くのしかかっている」と指摘する。これは、自由奔放で投機主導だったコロナ禍の時代には見られなかったことだ。
だがレポートによると、支出額の中央値は比較的安定しており、2022年の5万165ドル(約784万円)から2023年の5万ドル(約759万円)へとわずかに減少しただけだ。2024年前半には中央値の支出が2万5555ドル(約388万円)に達しており、2024年に入っても市場は概ね安定していることが伺える。
ミレニアル世代の購入が減退し、X世代が旺盛
今回のレポートで得られた最も注目すべき結果は、世代による消費の大きな違いだ。現在28歳から43歳のミレニアル世代の富裕層の消費額は、2022年は大幅に増加していたが、2023年は前年からなんと50%も減少した。だが、中央値の支出は比較的横ばいだった。逆に44歳から59歳のX世代は、前年比で3%という低いながらも着実な成長を見せ、2023年には平均支出額が57万8000ドル(約8800万円)と、ミレニアル世代の39万5000ドル(約6000万円)を大きく上回り、2024年前半もその差は続いた。
新進アーティストへの注目が高まる
支出額の低迷についてマッキャンドルーは、大富豪の数は増加している(フォーブス誌によると、昨年より141人増えている)とした上で、US版ARTnewsの取材に次のように説明した。
「私たちが経験している高級品の低迷は、大富豪が高額な作品をあまり購入していないことが原因ではないかと尋ねられたことがあります。確かに消費は減少しており、富裕層の人々は版画や紙で制作された、1万ドルから70万ドル(約150万円~1億円)未満の作品を購入しているのです」
実際に、富裕層の出資のうち美術品にあてられる割合は2022年に24%でピークに達したが、2024年には15%に減少している。一方で、支出の52%を新進気鋭のアーティストの作品に充て、中堅アーティストには21%、実績のあるアーティスト(大半は存命中のアーティスト)に26%を充てているという調査結果も出ている。マッキャンドルーは、「(支出減は)必ずしもネガティブなことではありません。それは新たな市場を生み出すことになるのです」と付け加えた。(翻訳:編集部)
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