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  • 2022.02.04

サンローラン、マイアミビーチの砂浜で日本人アーティスト、ショウ・シブヤの作品を展示

2021年12月のマイアミ・アート・ウィークで、フランスのラグジュアリーファッションブランド、サンローランは、グラフィックデザイナーでアーティストのショウ・シブヤを起用。マイアミビーチの17番街近くの砂浜で展覧会を開催した。サンローランのクリエイティブディレクター、アンソニー・ヴァカレロの依頼で展示されたのは、シブヤが新聞に描いた「Sunrise from a Small Window(小さな窓からの日の出)」シリーズの一部だ。

2021年「アート・バーゼル・マイアミ・ビーチ」に登場したサンローラン リヴ・ドロワットの期間限定ギャラリー Courtesy Saint Laurent/Simon Chaput2021年「アート・バーゼル・マイアミ・ビーチ」に登場したサンローラン リヴ・ドロワットの期間限定ギャラリー Courtesy Saint Laurent/Simon Chaput

ニューヨークを拠点とするシブヤは、プレースホルダー(Placeholder)というクリエイティブスタジオの創設者だ。彼はコロナ禍に触発され、2020年からこのシリーズを制作し始めた。コロナによる難局と社会不安に関する報道の論調が深刻さを増しつつあった2020年4月、シブヤは新聞の1面に絵を描き始めた。サンローランのプレスリリースによれば、暗い記事の上に描かれた日の出は、「いつもと変わらぬ朝の空と、ますます混沌を深めるニュースとの隔たりを和らげる」ものだ。

ショウ・シブヤ「55 Sunrises (55の日の出)」シリーズより《無題》 Courtesy Saint Laurent

このシリーズの作品の一つは、「米国の死者、10万人に迫る。莫大な損失」という見出しの下を、落ち着いた色合いの青一色で四角く塗りつぶしたもの。シブヤはその直後、ザ・タイムズのインタビューに答えて、「その日はパンデミックの深刻さを実感した日でした。新聞の1面を塗りつぶすことで、苦しんだ人々に私なりのオマージュを送ったのです」と説明している。また、国会議事堂での暴動やワクチンについて伝える記事が、赤や薄いオレンジ色調で塗りつぶされた作品もある。

サンローラン リヴ・ドロワットは、アーティストとのコラボレーションでラグジュアリーとストリートスタイルを融合させた限定商品を生み出している。そのレガシーを受け継ぐデザインと現代アートを抱合するというコンセプトの展覧会が行われたのは、海岸に設置されたシンプルな箱型の会場だ。シブヤは、作品を展示するこの仮設空間を周囲の景観と組み合わせている。シブヤとヴァカレロのねらいは、夕暮れや夜明けの水平線に見られる光の移り変わりを捉えることだった。作品は時系列に並べられ、シブヤが色の階調を通して毎日を綿密に記録したことを際立たせている。

シブヤは、ニューヨーク・タイムズを素材に用いて時事問題を扱う作品を制作した数多くのアーティストの系譜に加わることになる。過去にそうした試みを行ったアーティストには、コラージュ作品《Ground Zero(グラウンドゼロ)》を2003年に発表したエルズワース・ケリー、《Cutting Out the New York Times(ニューヨーク・タイムズを切り抜く)》(1977)のロレイン・オグラディのほか、フレッド・トマセリ、リクリット・ティラヴァーニャらがいる。

過去2年間にわたり制作され、人々の関心を集めてきたシブヤの作品展示をヴァカレロがキュレーションしたのは、コロナ禍における時代精神と歩調を合わせるための動きだといえる。ヴァカレロがサンローランのクリエイティブ・ディレクターとして、ブランドの商品価値を高めるためにアーティストとのコラボレーションを行ったのは初めてではない。世界最大級の写真作品フェア「パリフォト2021」で、イヴ・サンローランのヌードを撮影したことでも知られるジャンルー・シーフの作品展示をキュレーションしたほか、同年7月にはヴェネチアで、ダグ・エイケンに制作を依頼した大規模なインスタレーションを2022年春夏メンズコレクション発表の会場としている。

参考:Sho Shibuya氏による日本初の展示販売会「Sunrise from a Small Window: A Selection from 2020」を期間限定開催
※本記事は、米国版ARTnewsに2021年12月2日に掲載されました。元記事はこちら

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