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アイ・ウェイウェイが「塀の中の人々」の作品展をキュレーション。ロンドンで10月末から開催

中国の反体制派アーティスト、アイ・ウェイウェイが、今秋ロンドンで開かれる展覧会のキュレーターを務める。そこで展示されるのは、英国の刑事施設などに収容されている人々の作品だ。

アイ・ウェイウェイ(ベルリンにて撮影) Photo by: Michael Kappeler/picture-alliance/dpa/AP Images

Freedom(自由)」と題された展覧会を主催するのは、収監者の作品展示や販売を行う慈善団体、ケストラー・アーツ。英国の刑事司法制度下の施設に収容されている人々の作品に賞を授与する「ケストラー賞」の60周年を記念し、ロンドンのサウスバンク・センターで開催される。会期は10月27日から12月18日まで。

刑務所、精神医療施設、不法移民収容所、少年院などに収容された人々の作品には、それぞれの施設での体験が反映されている。主催者のケストラー・アーツは声明で、「展覧会の構想が生まれたのは、6500点を超える今年度のケストラー賞応募作品を保管している我われのビルにアイがやって来た時のことでした」と述べている。

中国でおそらく最も有名なアーティストのアイは、2011年に北京で当局に拘束された。人権派弁護士や作家、ブロガーなど反体制派への弾圧が続く中で、中国の独裁政権を批判したことが背景にある。脱税の容疑をかけられ81日間刑務所に収監されたアイは、釈放後に行われたいくつかのインタビューで、拘束中は頻繁に取調べを受け、常に監視されていたと振り返っている。


2013年のヴェネチアビエンナーレで展示された《S.A.C.R.E.D.》
©ROBIN CEMBALEST 2013.

2013年には、その過酷な体験の一部を、《S.A.C.R.E.D.》というタイトルのジオラマ群として作品化。鉄でできた狭い部屋の中で2人の看守に監視されている自らの姿を再現した。

「この展覧会では、制約のある生活の中で考え、創造するという行為が果たす役割に焦点を当てる」と、アイは声明の中で述べている。「歴史に名を残す芸術作品や文学作品は、作家たちが完全に自由な環境にあった時ではなく、制限や抑圧を受け、逆境に立ち向かう時に生み出されている」

毎年恒例のケストラー賞には、アート、文筆、デザイン、音楽などの部門がある。今年も各施設に収容されている人々から数多くの作品が集まった。応募作品は審査のうえ、選考を通った作品が展覧会で披露されることになる。

主催者によると、アイは夏の間に何千点もの作品を審査するという。ケストラー賞60周年を記念する今年の展覧会を、「これまでで最も野心的なものにしたい」とアイは話している。(翻訳:野澤朋代)

※本記事は、米国版ARTnewsに2022年8月4日に掲載されました。元記事はこちら

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