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ハウザー&ワースのオーナーがロンドンのイケてる会員制クラブを買収。豪華なアート作品付き

世界的メガギャラリー、ハウザー&ワースのオーナー、イワン・ワースとマヌエラ夫妻は、短いながらも華やかな歴史を持つロンドンの会員制クラブ、グルーチョを買収。買収対象にはクラブが所有する150点のアート作品も含まれている。

アーティストのトレーシー・エミン(中央右)。グルーチョのパーティーにて(2009) Photo Dave M. Benett/Getty Images

グルーチョクラブは、ブティックホテルやレストラングループを所有するハウザー&ワースのホスピタリティ部門、アートファーム(Art Farm)を通じて購入された。ロサンゼルスの同ギャラリーにあるレストラン「マヌエラ」もアートファームの経営だ。フィナンシャル・タイムズ紙によると、アートファームによる買収額は4000万ポンド(約65億円)。グルーチョの会員は現在約5000人に上る。

アートファームとハウザー&ワースのCEOを兼任するユアン・ヴェンダースは、次のような声明を発表している。「私自身も会員なので、グルーチョがロンドンのカルチャーシーンで特別な存在なのはよく分かっています。アートファームによる経営は、クラブの将来を確かなものにするでしょう。これまでの歴史と伝統に敬意を払い、クラブの多様な魅力と独立独歩の精神の上に長期的な視野でグルーチョの未来を築いていきたい。そのために、会員の皆様と一緒に取り組んでいくことを楽しみにしています」

なお、ハウザー&ワースが、グルーチョクラブと何らかの関係を持つかどうかは明らかにされていない。アートファームが所有している事業の多くは、ハウザー&ワースと公式な関係はない。

37年の歴史を持つグルーチョクラブには、バーやレストラン、イベントルームのほか、宿泊できる部屋もある。会員は、出版、アート、映画、音楽、広告といった業界の関係者が中心で、その中には英国のアートシーンで大きな存在感を持つ作家たちもいる。たとえば、英国を代表するアーティスト、ダミアン・ハーストは、1995年にターナー賞を受賞した時、このクラブでパーティーを開催したと伝えられている。

ちなみに、グルーチョという名前は、「自分が会員になれるようなクラブには入りたくない」というグルーチョ・マルクス(1930年代に活躍した米国の喜劇俳優)の有名な発言にちなんでつけられた。また、この手の会員制クラブのほとんどが男性しか受け入れなかった時代から、女性を会員として受け入れてきた。

グルーチョとアートシーンとの関係は、単に会員のネットワークだけにとどまらない。同クラブでは、ダミアン・ハースト、マイケル・クレイグ・マーティン、トレーシー・エミン、ピーター・ブレイク、インカ・ショニバレ、バンクシーなど、英国で活躍するそうそうたるアーティストたちの作品を所有している。(翻訳:平林まき)

※本記事は、米国版ARTnewsに2022年8月11日に掲載されました。元記事はこちら

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