初代バーキン落札者、バリュエンスホールディングスの嵜本晋輔がUAE紙に落札の意義を語る

サザビーズ・パリで記録的な860万ユーロ(手数料込み、約14億円)でエルメス初代バーキンを落札したバリュエンスホールディングス代表取締役の嵜本晋輔が、UAE紙にその意義を語っている。

初代バーキン。Photo: Eléa Lefèvre
Valuence Holdings(バリュエンスホールディングス)代表取締役の嵜本晋輔が860万ユーロ(手数料込み、約14億円)で落札した、エルメスの初代バーキン。Photo: Eléa Lefèvre

高級ブランド品のリセール事業を手がけるValuence Holdings(バリュエンスホールディングス)代表取締役の嵜本晋輔が、先週サザビーズ・パリで860万ユーロ(手数料込み、約14億円)で落札したエルメス初代バーキンの取得の意義を、アラブ首長国連邦の英字紙『Khaleej Times(カリージ・タイムズ)』に語っている

初代バーキンは、1984年、当時エルメスのCEOを務めていたジャン=ルイ・デュマが、俳優でありファッションアイコンのジェーン・バーキンのために制作したもの。オールブラックのレザー製で手作業により制作された一点もので、2000年に一度パリで競売にかけられた後、先週までフランスの個人コレクションに所蔵されていた。サザビーズは当初、落札したのは「匿名の日本人バイヤー」であると発表していた。

嵜本はカリージ・タイムズに、「このバッグの落札は、個人としての節目であり、バリュエンスにとっても重要な転機となった」として、以下のように語っている。

「オリジナル・バーキンを手に入れることは、単なるビジネス上の決断ではなく、時代を超越したクラフツマンシップと文化的意義を象徴するものです。今回の落札は、単なる希少な高級品の購入や転売が目的なのではなく、世界的な文化遺産の一部を保存し世界と共有するための社会的に意義のある行為であると考えています。大切に保存し、適切な場合には展示を行うことで、私たちは文化の番人としての責任を果たすことを目指しています。この取り組みを通じて、私たちが大切にしている価値観である、循環性、信頼性、持続可能な繁栄を、より多くの世界中の人々と分かち合いたい。これは単なるバッグの話ではありません。オーナーシップからスチュワードシップへと、物語をシフトさせることなのです」

1982年生まれ、大阪府出身の嵜本は、高校卒業後にJリーグ「ガンバ大阪」に入団。現役引退後、2007年にブランド買取専門店「なんぼや」を手がけ、2011年に株式会社SOU(現バリュエンスホールディングス)を設立。持続可能性と倫理性を重視し、ラグジュアリーグッズに「第二の人生」を与えるというという理念に基づき、高級ブランド買取事業を通じて「サーキュラー・ラグジュアリー(循環型ラグジュアリー)」という概念を提唱してきた。

バリュエンスホールディングスは2018年に東京証券取引所グロース市場に上場。香港、シンガポール、アメリカ、フランス、イギリス、中国、アラブ首長国連邦にオフィスを構え、世界中に189店舗を持つ。中東では、ドバイの子会社、Valuence International MEA Trading L.L.C.と、ドバイとアブダビ、カタール(ドーハ)、サウジアラビア(リヤド)、トルコに店舗を持つブランド「ALLU」も展開。美術品やヴィンテージ時計のほか、真贋鑑定済みの高級リセール品なども取り扱い、その事業は、買取・小売だけでなく、自動車からテクノロジー、スポーツまで多岐にわたる。また同社は、B2Bオンライン・オークション・プラットフォーム「スター・バイヤーズ・オークション」も運営している。

嵜本はこのインタビューで、「私たちは、文化的価値観と意識的消費に根ざした『サーキュラー・デザイン・カンパニー』として自らを位置づけています。つまり、ラグジュアリーを再販するだけでなく、ラグジュアリーを所有することの意味を再定義するのです。私たちの目標は、2030年までに循環型経済におけるグローバル・イノベーション・リーダーになることです」と説明し、「今後とも、このレガシーアイコンを後世に伝えながら、持続可能性を推進していきます」と締めくくっている。

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