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日本の特攻隊員を描いたとされる作品が北京の北京のUCCAで撤去。検閲との見方が浮上

中国のアーティスト、李松松(リー・ソンソン)の絵画作品《Six Men(6人の男たち)》(2008)が、北京のユーレンス現代美術センター(UCCA)の展示から撤去された。中国政府による検閲ではないかと見られている。

李松松(リー・ソンソン)の《Six Men(6人の男たち)》(2008) Image via Weibo

《Six Men》の撤去は、中国当局への苦情申し立てがあったという報告を受けての措置だという。その後、この絵が展示されていた展覧会の解説の一部がUCCAの公式ウェブサイトから削除されたという報道もある。

同作品の画像は、8月上旬に中国のソーシャルメディア、微博(ウェイボー)で拡散。第2次世界大戦中の日本の神風特攻隊員の写真をもとに描かれたとされることから、懸念を示す投稿が相次いでいた。

《Six Men》が展示されていたのは、ベルギー人アートコレクター、ガイ&ミリアム・ユーレンス夫妻によるUCCA創設15周年を記念する企画展「Common Ground(共通点)」。同展は5部構成で、中国内外のアーティスト53人の作品約100点の展示が企画された。展示作品の多くは、パトロン団体であるUCCA財団評議会のメンバーが所有するものだ。

《Six Men》は、中国の現代アートを収集している北京の実業家、リウ・ランのコレクションから貸し出されたもので、2011年にも北京、上海、広州の美術館で展示されたが、その際に問題になることはなかった。ARTnewsはリウにコメントを求めたが、記事掲載時点で回答は得られていない。

ペース・ギャラリーに所属する李松松は、絵の具を塗り重ねる作風と、歴史的なイメージをもとに現代中国の政治的な出来事を描くことで地元の北京ではよく知られている。《Six Men》は、5部構成の展覧会のうち、「Images and Forgetting(イメージと忘却)」セクションに、石冲(シ・チョン)、楊福東(ヤン・フードン)、張鼎(ジャン・ディン)、張曉剛(ジャン・シャオガン)らの作品とともに展示されていた。

2013年に習近平が国家主席に就任すると、中国政府は言論の自由を制限し、メディアやアーティストに対する検閲を強めるようになった。さらに最近では、民族主義や反日感情の高まりも伝えられている。なお、UCCAの「Common Ground」展は、当初の予定より1週間早い8月7日に終了している。(翻訳:清水玲奈)

※本記事は、米国版ARTnewsに2022年9月28日に掲載されました。元記事はこちら

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