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教会の下に古代ローマの巨大神殿? クロアチアの古都から遺構が見つかる

アドリア海に面したクロアチアの古都シベニクの郊外で、古代神殿の基礎部分が見つかった。遺構が発見されたのは、ダニロ村にある18世紀に建てられた聖ダニエル教会の下やその近隣だ。この村は古代ローマの都市、リディットがあった場所とされる。

1950年代に聖ダニエル教会近くの中世墓地で発掘されたローマ神殿の構造物 Photo F. Welc

これまでの発掘で神殿の装飾など建築物の一部が見つかっていたが、その場所は特定されていなかった。今回は地中レーダーの画像から神殿入口の柱廊の跡と思われるものを発見。幅約20メートル×高さ約10メートルもの壁に囲われた巨大な神殿だったと見られる。

ポーランド・ワルシャワにあるステファン・ヴィシンスキー枢機卿大学考古学研究所のファビアン・ウェルクは、この神殿は広場の一部にあった可能性が高いとサイエンス・イン・ポーランド誌に語っている。古代都市の中心部に位置するこの広場には、裁判所や役所など主要な公共建築物があったと推測される。

ウェルクが所属する考古学研究所は、クロアチアの首都ザグレブの考古学研究所、シベニク市博物館とともに、2019年から発掘プロジェクトに取り組んでいる。その中で、LIDAR(*1)による上空からのスキャニングで地形を詳細に解析したところ、ごくわずかながら地表に沿って建築物の輪郭が検出されたという。続いて、9世紀から15世紀にかけて使用されていた墓地の一部(中世の墓には古代ローマの浴場跡に掘られたものがある)、中庭や屋根付きの玄関のある大規模な建物跡も発見された。


*1 LIDARとはLight Detection And Ranging(光による検知と測距)の略で、近赤外光や可視光、紫外線を使って対象物に光を照射し、その反射光を光センサーで捉え距離を測定するリモートセンシングの1つ。

これまで、地球物理学的探査や航空レーザー計測を用いた大がかりな解析により、聖ダニエル教会の墓地周辺でローマ時代の住居や公共施設が多数確認されている。ダニロ村では、水道管工事で古代ローマの碑文が出土したことに始まり、過去70年以上にわたって考古学調査が続けられてきた。碑文の中には、ローマ時代にリディット族が建設した都市、ムニキピウム・リディタルム(*2)に関するものもあった。


*2 ムニキピウムとは、古代ローマとなんらかの関係を結んだ都市国家や都市などの共同体。自治が認められ、市民にはローマの市民権が与えられた。

*from ARTnews

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