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ゴヤの《着衣のマハ》に手を糊付け。スペインのプラド美術館でも環境活動家による抗議行動

エジプトのシャルム・エル・シェイクでは11月6日よりCOP27(国連の説明では、「地球上のほぼすべての国々が参加する地球規模の気候サミット」)が開催中だが、その前日、スペインの環境活動家グループ「フトゥーロ・ベジタル(Futuro Vegetal)」が、美術館での抗議活動を行なった。

プラド美術館のゴヤの名画に手を糊付けする活動家たち。壁には「1.5℃」の文字が。 Photo: Still from Twitter Video

今回ターゲットとなったのは、マドリードのプラド美術館にあるフランシスコ・デ・ゴヤの絵画《着衣のマハ》(1800年頃)だ。彼らはこの作品に自らの手を接着し、絵画の横の壁に「1.5℃」と書いたという。

フトゥーロ・ベジタルはTwitterに投稿したビデオの中で、「国連は先週、世界の平均気温上昇を1.5度に抑えるパリ協定の目標を達成するのは不可能だと認めた」と言及。この活動家グループが参照した国連の報告書によると、地球の気温は今世紀末までに2.4℃から2.6℃上昇する可能性がある。

国連環境計画のインガー・アンダーセン事務局長は、この報告書の結果を紹介する記事の中で、「私たちは段階的な変化を遂げる機会を得たが、その時間は終わった」と危機感を露わにし、「経済と社会の根本的な変革のみが、加速する気候災害から私たちを救うことができる」と続けている。

一方、プラド美術館もツイッターを通じ、「美術館で行われた抗議行動は許されざる行為です。抗議の手段として文化遺産を危険にさらすことを断固として非難します」と声明を発表。「額縁が若干破損したものの、幸い、作品に被害はありませんでした。一刻も早く元通りになるよう取り組んでいきます」

環境活動家が最初に美術館の美術品に接着剤や液体を投げつけ始めたのは今年の6月だが、対象となった作品に被害は出ていない。この抗議活動は、環境団体のジャスト・ストップ・オイル(Just Stop Oil)が中心となり、イギリスで始まった。その後ヨーロッパ各地の団体や個人が、ポツダムのバルベリーニ博物館やローマのバチカン美術館、ハーグのマウリッツハイス美術館などで、芸術作品を標的に抗議行動を展開している。(翻訳:編集部)

*from ARTnews

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