コロナ不況でもアートの購買欲求は増加。UBS&アートバーゼルの最新調査より
UBSとアートバーゼルによる、約2,700人の(投資可能な資産が100万ドル以上の)アートコレクターと富裕層を対象に実施した最新の調査が発表された。新型コロナウイルスのパンデミックに起因する経済危機にも関わらず、アートへの需要は高まっていることが明らかになった。
「A Survey of Global Collecting in 2022( 2022年のグローバル・コレクター調査)」と題されたこの報告書によると、新型コロナウイルスの世界的大流行による不況にも関わらず、アートコレクターたちの美術品取引の機会は増加しているという。2020年から2021年にかけて美術品の輸入は41%、輸出は38%もアップしており、コレクターの美術品に対する支出も、世界の主要な市場拠点で増額している。
2022年上半期、調査対象となった(米国、欧州、アジアに拠点を置く)富裕層コレクターの支出額の中央値は18万ドル(約2,600万円)で、2021年の16万ドル(約2,300万円)と2020年の10万ドル(約1,450万円)からさらに増加した。また、購入作品の価格帯そのものも上昇しており、今回の調査で「100万ドル(約1億4,500万円)以上の作品を定期的に購入している」と回答したコレクターは全体の23%、前年の12%から約2倍になった。
この報告書の著者で芸術経済学者のクレア・マッキャンドル―は、今回の調査結果は富裕層コレクターのコマーシャルアートへの積極的な貢献の意思を反映していると述べ、それがパンデミック後の市場全体の回復を後押ししたと語っている。
また同報告書は、コレクターたちは収集活動を行う上で、アーティストのジェンダーにも目を向けるようになったと指摘。データを見ると、 個人のアートコレクションに占める割合は女性アーティストが42%、男性アーティストが58%と男性アーティストの割合が高いものの、女性アーティストの割合は年々増加傾向にあるとしている(ただし、その増加率は公表されていない)。
景気低迷、急激なインフレ、ロシアによるウクライナ侵攻など、経済活動に多大な影響を及ぼす脅威は絶えないが、それがアートコレクターたちの購買意欲を削ぐ要因にはなっていないことが、調査報告を通じて明らかになった。コレクターによる積極的購入はアートフェアを盛り上げると同時に、さらなる作品購入を促す好循環が生まれている。事実、2022年にアートフェアで作品を購入したコレクターは全体の74%にもおよび、21年の54%から大きく上昇した。これらの数字には対面購入とオンライン購入の両方が含まれているが、報告書によると、約半数のコレクターが、実際に作品を見ることなく定期的に購入していると回答している。
このように、全体的にはポジティブな空気が生まれている反面、サステナビリティの観点で、調査対象のコレクター及び富裕層の行動に矛盾があることが判明。あらゆる業界で気候危機への懸念が高まる中、2022年の美術品購入のに関する調査では、彼らの約77%が環境配慮型の技術の選択などを検討していると回答しつつも(2019年には62%だった)、その多くがアート関連旅行を積極的に行っていることがわかった。(翻訳:貝谷若菜)
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