廃墟同然のフランク・ロイド・ライト住宅に再生の兆し──差し押さえを経て「ファニーメイ」が取得
- TEXT BY ANDY BATTAGLIA
廃墟同然の状態が続いてきた、シカゴ西部オースティン地区にあるフランク・ロイド・ライト設計の住宅「J.J.ウォルサー・ジュニア邸(ウォルサー邸)」が、差し押さえ手続きを経て連邦住宅抵当公社(Federal National Mortgage Association、通称ファニーメイ)の所有となった。建物保存に携わってきた関係者は、再生に向けてようやく次の段階に進んだことを歓迎している。
連邦住宅抵当公社(Federal National Mortgage Association、通称ファニーメイ)は2025年12月、1903年に建てられたフランク・ロイド・ライト設計の住宅「J.J. ウォルサー・ジュニア邸(ウォルサー邸)」を取得したとシカゴ・サンタイムズ紙が伝えた。
ウォルサー邸は1903年、印刷会社の重役だったジョゼフ・ジェイコブ・ウォルサーの依頼でシカゴ西部のオースティン地区に建てられた。ライトが「手頃な価格の住宅」を念頭に設計した初期の優れた例とされ、建設費用は当時4000ドル、現在の価値で約15万ドル(約2400万円)相当と見積もられている。しかしその規模とは裏腹に、水平ラインを強調した外観、深く張り出した庇、造り付け家具を備えた開放的な内部空間など、後年に展開される成熟したプレーリースタイルの要素がすでに色濃く表れていた。
その後、ウォルサー邸は所有者を転々とし、1970年代からはアンナとハーレー・ティーグ夫妻が居住。夫妻は長年にわたり建物の維持に努めてきたが、2019年にアンナ・ティーグが亡くなると管理が行き届かなくなり、建物の劣化が急速に進んだ。さらにティーグ家は約20年前、同邸を担保にリバースモーゲージ(不動産担保融資)を利用しており、相続者による金利支払いの滞納を受け、2023年から差し押さえ手続きが進められていた。






こうした中、今年1月15日、ウォルサー邸が不動産情報サイト「ジロー」に35万ドル(約5500万円)で売りに出されていることが判明した。しかし、フランク・ロイド・ライト建築の保存・保護・普及を目的とする非営利団体「フランク・ロイド・ライト・ビルディング・コンサーバンシー」がフェイスブック上で明らかにしたところによれば、同団体が「売り手」とされる人物に連絡を試みた過程で不審な点が浮上。さらに、保存活動を続けてきた地域団体「オースティン・カミング・トゥゲザー」の確認により、この掲載が偽物であることが判明した。現在、ジロー上の販売情報は取り下げられている。
コンサーバンシーの事務局長バーバラ・ゴードンはサンタイムズ紙の取材に対し、「この住宅はファニーメイが所有しており、現在は販売されていません。この偽の掲載情報は、善意ある購入希望者を欺くことを目的としている可能性があり、この重要な住宅が抱える深刻な脆弱性を浮き彫りにしています」と語った。
ファニーメイ側も声明を発表し、「無断で掲載された販売情報の削除を要請する措置を取りました。現在は建物の初期的な対応およびがれきの撤去を進めており、その後、正式な売却に向けた準備を開始する予定です」と説明している。
現在のウォルサー邸は廃墟同然の状態で、居住は不可能だ。最近の鑑定では評価額は6万5000ドル(約1000万円)とされているが、居住可能な状態に戻すには少なくとも200万ドル(約3億円)規模の修復費用が必要と見込まれている。さらに同邸はシカゴ市の指定歴史建造物であり、国家歴史登録財にも登録されているため、修復にあたっては厳格な保存基準が求められる。この点についてゴードンは、「指定は、当初の設計意図や使用されている素材、内部空間の特別な性格を守ることを求めるものです。これは、いかなる購入希望者も理解しなければならない点です」と強調する。
それでも、差し押さえ手続きが完了し、ウォルサー邸がファニーメイの管理下に置かれたことは、建物再生に向けた大きな転機ともなり得る。ゴードンは、「差し押さえという混乱から建物が抜け出した今、これは良いニュースです。新たな所有者に向けた明確な道筋が、ようやく見えてきました」と語っている。(翻訳:編集部)
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