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難しい選択:それでもアートNPOで働きたい?

何年も前、あなたはある有名なアートNPOの無給サマーインターンシップを経験し、そのままそこで低賃金で働くことになった。あなたの愛するNPOは、評判が良いにも関わらず、常に危機的な資金不足にさらされている。

Illustration Mari Danzi
Illustration Mari Danzi

資金集めのパーティーで残ったワインを飲み、新しいディレクターがどんどん交替するのに自分の昇進は見送られる。展覧会や日々の仕事の細かいところに気を配るだけでなく、予算や資金調達、故障したドアベル、トイレの故障など、舞台裏で起きるさまざまな問題にも絶えず対処しなければならない。

友人や支援者、あなたが面倒を見ているアーティストたちは、今までの経験を生かして別のところで働いたらどうかと言う。しかし、これは単なる仕事ではなく、コミュニティであり、言うまでもなく自分のアイデンティティでもあるので、なかなか踏み切れない。

他の業界で働く友人たちが休日に華やかなパーティーを楽しむインスタグラムの投稿をスクロールしながら、詰め込み過ぎのDVDラックを見つめ、あなたは2022年の決意を固めることにした。決別するべきか、このまま続けるべきか、以下のテストで診断してみてはどうだろうか。

1. NPOの上司がガラパーティーで皆のハードワークをねぎらい、感謝の言葉を述べているが、あなたの名前は入っていない。どうする?

a. 大きく咳払いをして、何でもないように振る舞う。
b. 退職願を書くことを想像し、この出来事についてどう付け加えるか考える。
c. 上司のPCのパスワードをこっそり卑猥なフレーズ「1maB1gd1ck69 (I am a big dick 69)」に変更する。

2. 作品の設営中に、アーティストグループのメンバーが仕事そっちのけでトイレでマリファナを吸っているのを見つけた。どうする?

a. 喫煙規定を破ったとして、彼らを出入り禁止にする。
b. 無視して、彼らのビデオ作品を再生するために必要なHDMI機器を探し続ける。
c. 副業として、OGクッシュ(マリファナの一種)を1オンス売りつける。

3. 新しい展覧会のオープニングで、ビデオ作品のための電源コードが床に固定されておらず、観客がつまずいてしまった。どうする?

a. いつもバッグに入れてある蛍光色の粘着テープをつかみ、パーティーの用の気取った盛装のまま人ごみを分けて現場に急行する。
b. 見なかったふりをして、プロジェクターが台から落ちたらびっくりしたように振る舞う。
c. 自分には学芸員の資格があったことを思い出し、設置作業員を呼んで直させる。

4. 清掃員が賃金未払いでやめてしまい、代わりが見つかるまでトイレ掃除をしなければならない。どうする?

a. 近くのスーパーのトイレへの道案内看板を作ってかけておく。
b. 泣く泣くトイレの清掃用具を自腹で買うが、レシートを失くしてしまい精算できない。
c. ホラーな光景を隠すために調光器を付けて照明を暗めにする。

5. オフィスのPCのソフトが古すぎて、アーティストが送ってきたビデオファイルが開けられない。どうする?

a. インターンを使って、アドビ・クリエイティブ・スイートを違法ダウンロードさせ、ネットワークをウイルス感染させる。
b. 付き合っているボーイフレンドに、ラップトップを借りられないか聞いてみる。
c. 展覧会を中止する。

6. 展覧会を行うために招聘(しょうへい)したアーティストグループの人数があまりに多いので、W.A.G.E(Working Artists and the Greater Economyの略)で決められた料金を払うことができない。どうする?

a. 自分も正当な報酬を得ていないとアーティストに文句を言う。
b. 通常3人分の報酬を、ひたすら謝りつつ10人のアーティストに払う。
c. すぐ理事長に電話をして、アーティストたちに正当な報酬を払うための寄付金をせがむ。

7. アーティストたちは、すでに印刷に回っている春のプログラムカレンダーの間違いを訂正するよう要求してきた。どうする?

a. 印刷を止め、特別料金を払って訂正を入れる。
b. 間違いはオンラインで訂正するし、ダイレクトメールは誰も見ないと言う。
c. アーティストがモニターの音量をもっと大きくしたいと言ったとき、うなずくが何もしない音響担当者を見習い、変更すると言っておいて何もしない。

8. 展覧会のオープニングにアルコールが目的の常連客がやってきて、ギャラリーのトイレで気絶した。どうする?

a. 彼はサイトスペシフィックなパフォーマンスをしていると言い、救急隊員が彼を連れて行くときには拍手で送り出す。
b. 彼の財布をいただく。
c. 気つけ薬で目を覚まさせて、ボランティアのガイドをやってみないか説得する。

9. 感謝祭から年明けまでのホリデーシーズンが近づき、贈り物のことを考えなければいけないが、週末は受付対応に追われて仕事から抜け出せない。どうする?

a. 遠くに住む親戚を思い出してパニックになる前に、贈り物をする予定の相手全員に無料上映会のクーポン券を送る。
b. もらったけれど絶対に読みそうもない本を、スタッフの「シークレット・サンタ」パーティーのプレゼントにする。
c. 忘れ去られていた古い展覧会ポスターを掘り出し、友人たちを驚かせるプレゼントにする。

10. 古いコピー機が壊れ、新品を買うのかリースするのか決めなければならない。どうする?

a. あらゆる選択肢を調べ上げ、大量の契約書を読み、費用的に一番賢明な決定をする。
b. かかりつけの心理療法士のプライベート番号に電話をして意見を聞く。
c. ラベルライターの交換用リボンをどれにするか決めかねている。

11. 年末の寄付金募集の手紙でヘマをしたせいで、配達が間に合うようスタッフと一緒に手作業をしなければならない。どうする?

a. 昨年同様、この年末の手紙はもう二度とやらないと誓う。
b. ピザやビールを買ってきてパーティーをする。
c. みんなを家に帰して、手紙はそれぞれ涙で封をさせる。

採点とアドバイス

次の表で質問ごとの点数を集計し、ポイントごとのアドバイスを参考にしてみよう。

11–17点

あなたが縁の下の力持ちとしてそこにいれば、アート界はおそらくより良い場所になるだろう。仕事をやめると、組織が内部崩壊しないように長年努力をしてきた全てをあきらめることになる。喜んであなたにとって代わってくれる人はいるだろうが、この仕事の重さに耐えられるだろうか。あなたとあなたが務める組織は、これからも老いていく。しかし、今のポジションにしがみついていれば、この先何年も現状維持が保証されることを忘れてはならない。

18–25点

あなたは退職するかどうか迷っているが、決断を先送りしている。そんな時は、オフィスで暖かく過ごせるものや自分用のハンドソープ持って行くと妙にほっとするものだ。能力以下の仕事しかしていない気分になるかもしれないが、自分で展覧会を企画したり、修道院のようなNPOでの苦労を理解してくれるありがたいアーティストと親しくなれたり、報われたと感じられるすばらしい瞬間もあるだろう。

26–33点

イジェクトボタンを押し、自由人として地球を歩く時だ。十分に経験を積んだあなたが汗と涙を流さなくても、組織は何とか存続していくだろう。あなたの長年にわたる奉仕は、来年のガラパーティーのプログラムに印刷されて感謝され、あなた宛てに通販のカタログが郵送されてくるたびに、スタッフはあなたを思い出し続けるだろう。NPOのPTSDから回復するために、まずはゆっくりすること。そして、連絡先をダウンロードするのと、コピー用紙を数パックくすねてくるのを忘れないように。きっと次の仕事で役に立つはず!(翻訳:平林まき)

※本記事は、米国版ARTnewsに2021年12月20日に掲載されました。元記事はこちら

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